●10月20日(金) / 子どもとホトトギスとルリタテハ
<ホトトギス> ユリ科 学名 Tricyrtis hirta
これも、秋が来ると毎年咲いてくれる花。名前の由来は、この花がホトトギス(鳥)の胸の斑紋と似ていることから名づけられ、色も他に黄色,白などがあり日本の季節の風情が感じられるお茶花でもある。
「せんせーい、毛虫毛虫すごいのがいるよー」と知らせてくれたのは年中児の男の子。葉っぱの下にポトンと落ちていたそう。「まあー、すごい形してるねー」といいながら、早速いつものように子どもたちと図鑑のページをめくり確かめる。実は、この瞬間の子どもたちの目は一途で真剣そのものなので(よく見ていないが恐らくそう感じられる)、まったが許されない気さえする。小学館の昆虫図鑑に載っている幼虫の種類には限界があるため、図鑑の中に探し当てられなかった時にはとても残念な思いが残っていた。きっと子どもたちもそうだろう。確実に、園内の植物に産みつけた蝶や蛾などの幼虫のお名前が調べられるように『日本産幼虫図鑑』(学研)なるものを探し抜いて調達した。これは重いが素晴らしいと言わざるを得ない図鑑だ。子どもたちの目はとても鋭く、ページをめくる度に「ちがう、ちがう」と厳しいくらいの声が応える。
ついに、「これやー!」「そや、これや」と一斉に声がした。アップで見ると、虫が嫌いな人は恐らく飛び上がるかと思われるくらいドラマチックな姿のこの幼虫は、『タテハチョウ科 ルリタテハ』の幼虫と判った。タテハ蝶類の成虫はオレンジ色の美しい色のものが多いが、ルリタテハの成虫のハネは黒っぽく、しかし端っこにルリ色のあしらいがあり案外美しい蝶である。食物は、・・・ホトトギス・・・ヤマユリなどと出ている。なるほど、成虫がすぐ横のホトトギスの葉裏にいつか産み付けたのだろう。それが判ったところ、男の子たちは近くにあったサクラの葉の上にそっと載せてあげ、もといただろうホトトギスの葉に戻してあげたところで、ほっと一息ついたようでした。
園内は秋、カシやクヌギの実やカクト(殻斗)を採って懸命に集めている。「それ、ほしいの」という年少の女の子のつぶらな瞳と言葉に、うーんと考えた末、「はい」と渡してあげる男の子の優しいシーンも見られこちらも嬉しくなる瞬間がある。