福西です。
この日は、前回途中まで考えた『原論』の命題3.1を証明しました。
命題3.1 与えられた円の中心を作図せよ。
これ自体は作図の問題ですが、実際に作図した点が本当に円の中心になっているかどうか、その証明も必要となります。
つまり、「作図の方法」と「作図を支える理屈」と二段構えで書かなければなりません。これは案外大変です。けれども一から十までできた時には、大きな達成感があります。
R君が最初考えあぐねていたので、一つだけこっそりヒントを出しました。
「『点と点で線ができる。』この文章の点と線を入れ替えてみてください」と。
「線と線で点ができる」と、R君。
これが今回のヒントです。
そしてR君は、二本の直線の交点として、中心を探すことに思い当たりました。
ただ最初に考えたのは、「直径と同じ長さの線を二本引き、その交点が円の中心となる」というものでした。
残念ながら、直径は円の中心を知っていないと描けません。よって、今回は別の「二本線」が必要となります。
そこで、直径以外の線として、弦を引くことにしました。ただし、これはあとで証明を付すための工夫として、試行錯誤の結果、
「与えられた円に対して、同じ長さで、端の一点を共有している弦を二本描く」
ことにしました。そして次に、
「それぞれの垂直二等分線を引き、その交点Oが円の中心である」
と。
作図方法としては、これでOKです。(ちなみに実際の作図では、弦の長さは任意で、端点がくっついている必要はありませんが、それだと後の証明がややこしくなるので、ここでは上のようにしました)
次に、作図した点が実際に円の中心になっていることの証明です。
これにはR君は二段階のプロセスを踏んでくれました。
1)二つの弦の上に立つ、点Oを頂点とする三角形がそれぞれ二等辺三角形であることを証明する。
2)二つの弦のそれぞれの両端(一点は共通で計三点)から、点Oへと結んだ三つの線分が、それぞれ等しいことを証明する。
1)では、R君は1巻の時にした二等辺三角形についての証明を思い出しました。そして、二等分線の左右にある三角形について、二辺挟角で合同を示すことで、証明を完成させてくれました。
2)では、二つの弦の長さを同じにし、また1点を共通にしたことで、証明が容易になりました。つまり、二つの二等辺三角形の斜辺がそれぞれ等しいことから、点Oは、円周の三点からの距離が等しい点であることが言えて、すなわちそれは円の中心に他ならないということが示せました。
このようにR君は、「作図」→「合同の証明」→「円の中心である証明」という長い証明を、途中であきらめることなく、完全に書いてくれました。「最初から最後まで自分の言葉で埋め尽くすことができた」というところに、価値があると思います。それはあたかも、R君がクラブでしている、ゴールを見据えながら、息を切らすことなく、何週ものトラックを走り切る、中距離走のようだなと感じました。
R君は、学校で今、幾何の範囲をしているそうです。「幾何は得意です」と言ってくれているのが私も嬉しいです。これまで山の学校でもずっとしてきたこともあり、『原論』にはじめて触れた頃に比べると、用語の使い方も確かになり、R君の文章はとてもかっちりしてきています。今回それを目にすることができ、頼もしいと感じました。
次回は3.2を証明します。