『おこりんぼママ』
ユッタ・バウアー絵文、小森香折訳、小学館2000年
「たすけて」って いいたくても、くちばしも ない。
きょう、ママが、ものすごく どなった。
というわけで、一ページ目からびっくりします。
母ペンギンと子ペンギンのお話です。その怒りようがものすごいので、「ぼくは、バラバラになってとんでいっちゃった」のでした。ページをめくるごとに、あたまも、おなかも、つばさも、くちばしも、おしりも、飛んでいってしまいます。
そして、あしだけになった「ぼく」は、残り部分を探しに出かけようとしますが、どうにも見つけることはできません。だって、あたまもないのです。
「たすけて」って いいたくても、くちばしも ない。
この一言で読み手は、ただ、面白おかしく作者がバラバラにしたのではないことに気付きます。ほんとうに「バラバラ」というのが、言葉にできない衝撃で、絵が、それを代弁してくれているのです。
疲れて動けない「あし」のところへ、お母さんが残りを集めて持ってきてくれます。そうして、お母さんならではの腕前で、糸でつないでくれます。
お母さんは「ごめんね」と言います。そしてその子も、ママが一番と思います。「おこりんぼ」とはうりふたつな気持ちをもまた、絵本の世界は代弁してくれているのです。
文章 Ryoma先生