お山の絵本通信vol.20

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『めがねうさぎ』
文・絵/せなけいこ、ポプラ社1975年

この絵本は、私が幼稚園の先生を目指すということで、将来役に立つかも…。と母が残しておいてくれた何冊かのうちの一冊であり、また、実習で初めて素話に挑戦した時の一冊です。

 素話は子どもたちに絵本を見せないで、お話をするもので、何度も何度も読み返し、お話を覚え、どうすれば子どもたちに上手く伝わるだろうかということを考えていたことを思い出しました。
 そして、初めて子どもたちの前に立つということもあり、子どもたちの顔がしっかり見られず、自分自身でもきちんと話せていたのだろうか? と問いかけるぐらい、緊張していたことも思い出しました。

 しかし、終わった後に子どもたちから、「おばけが出てきてドキドキした!!」「おもしろかった!!」などと言ってくれ、とてもうれしい気持ちになり、より一層、幼稚園の先生になりたい! と思ったことを覚えています。

 この『めがねうさぎ』は題名通り、眼鏡をかけたうさぎのうさこが主人公のお話です。
 主人公であるうさこは、眼鏡を山で落としてしまい、探しに出かけます。しかし、森の奥には退屈なおばけが待っていて…。おばけと聞くと怖いけれども逆に怖いもの見たさということもあり、なぜかドキドキワクワクします。
 それに加え、うさこは一体どうなるのだろう? 眼鏡は無事に見つかるのか? ということも感じ、ハラハラしたりいろいろな思いが読み手の頭の中をかけめぐります。そして、ドキドキハラハラの中にもユーモアな部分がみられ、笑いも誘います。

 また、絵が描かれているのではなく、和紙や色紙を貼って作った貼り絵風になっていて、立体感を感じることができ、お話の内容だけではなく、目でも楽しむことができる絵本です。

文章 Tomomi先生