お山の絵本通信vol.29

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『サンタおじさんのいねむり』
文/ルイーズ・ファチオ、訳/前田三恵子、絵/柿本幸造、偕成社1969年


「あっ! この絵本…。」と見つけた時、大好きだったページを必死に探しました。まだ少し季節が早い絵本ですが、私が小さい時に好きだった絵本です。

私が保育園時代、ピアノの先生のところでおけいこの順番を待っている時に読んだのがこの絵本との初めての出会いでした。まだ余り字が読めなかった私は、殆ど絵だけを見て、この絵本を楽しんでいました。何とも優しそうなサンタのおじさん、かわいらしい動物達、見ているだけで嬉しくなる色とりどりのプレゼント…。

でも何よりも、サンタさんのおくさんが持たせてくれた、手作りのサンドイッチと温かいコーヒーをサンタさんが食べる所が私のお気に入りのページになりました。そのサンドイッチの何ともおいしそうなこと。コーヒーも当時飲んだ事がなかった私は、勝手に味を想像し、ただただ「おいしそう。食べたいなあ。」とその絵を見ているだけで幸せな気持ちになりました。

その当時から、くいしんぼうだったのかと、はずかしくなりますが、おいしそうなサンドイッチとコーヒーの絵が見たい為におけいこに行く度、何度もこの絵本を見ていたのを覚えています。そのうち、字も読める様になり、お話もとても温かくて、素敵なので大好きになりました。

この絵本を幼稚園で見つけた時まず、最初にあの大好きだったページを開け、確認してみました。でもやっぱり「おいしそう。」と大人になった今も子どもの頃と同じように感じる事が出来嬉しかったです。

私がこの絵本を好きになったのは、お話の内容ではなく、おいしそうなサンドイッチとコーヒーの絵があったからです。お話はしっかり覚えていなくても、絵を見て「この絵本読んだことがある!」と思い出す事がよくあります。子ども達にとって、絵本の絵はとっても大切です。1冊1冊子ども達が出会う絵本をゆっくり、じっくり見せてあげたいと思います。

お話が好きな絵本、絵が好きな絵本、色あいが好きな絵本…。子ども達にも自分だけの"好き"のある絵本に一杯出会って欲しいと思います。

文章 Tomoko先生