『ポケットのないカンガルー』
H.A.レイ/絵、エミイ・ペイン/文、にしうちミナミ/訳、偕成社1970年
───というのはね、ケイティは、せかいいち たくさん
ポケットのある おかあさんカンガルーなんですもの。
この「絵本だより」を書くにあたって、私が幼い頃に両親から読んでもらった絵本を思い出してみました。でも「これっ!」という絵本はありませんでした。私は、寝る前にお布団に入って、絵本を読んでもらう代わりに、お話をしてもらう事がほとんどだったからだと思います。両親が共働きで、なかなかゆっくり一緒に遊んだりする事が難しく、寝る前のその時間が私はとっても好きでした。両親が語ってくれるお話を目をつむり、その場面を自分でイメージして聞くのです。日本の昔話、世界の有名なお話が主で、昔から語り継がれている物語は、ほとんど父や母のお話で知り、覚えたように思います。
同じ物語を何度聞いても飽きることはなく、自分でお話しができるくらい聞かせてもらいました。父の『三匹の子ぶた』、母の『ももたろう』、祖母の『おおかみ少年』という様にお話をしてもらう人によって好きな物語がありました。今でも語ってくれた人の声のトーンやお話の仕方が耳に残っています。寝る前のほんの何分間でしたが、大好きな父や母が側にいてくれ、自分の為にお話をしてくれる…。そんな時間の積み重ねが、私にとって大切な宝物になっています。
一日の最後の時間に、自分が大好きな人、そして自分の事を愛してくれている人と共に過ごせるという事は、子ども達にとって幸せなことだと思います。そんな幸せなひとときに、お話や絵本があったなら、それはきっと、大人になっても忘れられない大切なものになっていくと思います。寝る前でなくても、朝でも、お風呂に入っている時でも、一日のうちの少しの時間でも、親子で幸せな時間を共有し、その時間を大切にしていけたなら素敵だと思います。
今回はそんなお子さんとのひとときに読んであげてもらえたら。と思う絵本を御紹介します。『ポケットのないカンガルー』はその題名の通り、ポケットのないお母さんカンガルーのお話です。
かわいくて大切な我が子といつでも、どこにでも一緒に行きたくて、色々な動物を参考にしたり、ポケットを探しに町へ出かけたりします。子どもを愛するお母さんの思いが、文章からも絵からも伝わってきます。特に最後の文章と絵が素敵で、私の大好きな絵本の一つです。この絵本で親子の大切なひとときが、さらに楽しく幸せなものになるといいなと思います。
文章/Tomoko先生