お山の絵本通信vol.46

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『せんろはつづく』
竹下文子/文、鈴木まもる/絵、金の星社2003年

ある晴れた休日、絶好のお掃除日和だと朝から腕まくりをして部屋の大掃除をしていると、本棚の奥から三冊の小さなノートが出てきました。よく見ると表紙には「りすぐみ れんらくちょう」と書かれてあり、すぐに保育園時代の連絡ノートだと分かり手にとってみました。

そこには、毎日の私の様子について、先生と母とのやりとりが細かく記されていました。そういえば以前帰郷した時、思い出に大事に持っておきなさい、と母から受け取ったことを思い出しました。一ページ、一ページ苦笑しながら読みすすめていく中で、母がおやすみ前の絵本の時間をとても大事に思っていてくれたこと、又沢山の絵本を読み聞かせてくれていたことを初めて知り、思わず涙が溢れました。思い返せば、幼少時代、毎日外を走り回り絵本とは無縁だった私の、唯一の絵本との触れ合いは、お休み前のほんのわずかな時間でした。母のやさしい声に包まれて眠る心地良さをかすかに思い出し、幸せな時間だったなぁと少し恋しく思いました。

気がつけばすっかり時間が経ち、その日は仕方なく掃除を諦め、そのまま自分の保育園時代に浸ることにしました。早速、連絡ノートに記されていた、保育園で喜んで借りてきたという「したてやさん」の絵本を探しに本屋さんに走りました。しかし残念ながら見つからず帰ろうとした時、ふと目に止まり、どこか懐かしさを感じる絵本と出会いました。それが今回ご紹介する絵本です。

[せんろ]

かわいい子どもたちが線路をつなげて列車を走らせていきます。しかし目の前には数々の障害が…。さて、どのように乗り越えて行くのでしょうか? ドキドキワクワクのお話です。リズミカルな文章とかわいいイラストに心も和みます。絵本に描かれている雰囲気と自分の育った環境が少し似ている感じがしたのかもしれません。又、一つ一つ障害を乗り越えていく様子を自分達の人生と照らし合わせたのかもしれません。読み終えた時、とても感慨深いものがありました。またひとつ素敵な絵本と出会うことができたなぁと嬉しく思いながら、本屋さんをあとにしました。

そして家に戻った私はどうしても母と話がしたくなり、すぐに受話器を手に取りました。連絡ノートのお礼が言いたくて…。そして最後にいつまでも大事に持っておくことを約束しました。この三冊のノートはこれからの私をずっと大きく支えてくれることだろうと思います。ほんのわずかな時間でしたが、保育園時代の一人旅。心が癒され又これからの大きな活力ともなった、ともて楽しい旅でした。しかしまだまだ旅はつづきます。さてこの先にはどんな風景が待っているのでしょうか。せんろがつづく限り、精一杯、走りつづけていきたいと思います。

文章/Yumi先生