『どろんこハリー』
E・ジオン/文、M・B・グレアム/絵、渡辺茂男/訳、福音館書店1964年
それは私が幼稚園の先生になりたい!! という夢を持って短大の保育科に進めるようにと猛勉強していた頃のことです。
もしも保育科に進めたならば…以前から頼んでいた "犬を飼うこと" を改めて両親にお願いをし、それを励みに日々頑張っていました。(今から思えば随分大きくて無茶なお願いですが…!!!)色々な思いの甲斐があって、保育科へと進めることが決まり、約束どおり!! 犬を飼うことになりました。
家族全員でペットショップへ行き、皆で目を輝かせ、どの犬にしようかと迷いつつも、沢山いる中から1匹をケースから出してもらいました。小さな小さな体で私たちに代わりばんこに抱かれ嬉しそうにしっぽを振っていたその犬を、わが家の一員として迎えることにしました。家へと帰る車の中で「さて名前はどうしよう?」とあれこれ考えているとふと父が、「ハリーは? かっこいいやん。」とボソッとつぶやき、父が言うならそうしよう! と名前はハリーに決まりました。
実は犬が苦手だった母も飼ってしまえばかわいくて仕方なくなり、家中を走り回る元気なハリーに皆で目を細め、新しい家族に幸せをたくさんもらいました。そして私は短大へと進学し、先生になる為にと絵本をたくさん読んでいた時にふと目にとまったのが今回ご紹介する『どろんこハリー』の絵本でした。
お風呂に入るのが大嫌いな犬のハリーが、どろんこになり家族に自分がハリーと気付いてもらえず試行錯誤する。そして気付いてもらう為に、大嫌いなお風呂に入る。そんなお茶目でかわいいお話です。最後のページには『じぶんのうちってなんていいんでしょう。ほんとにすてきなきもちです』とあります。心に染みる暖かいフレーズだと思います。
わが家のハリーと同じ名前の犬が出てくる絵本ということで親しみを持ち手にとり、家族みんなで喜びながら読んだことを覚えています。その時の自分の環境や心境にピタリと当てはまり、共感したり感動したり、時には励ましてもらえたり…絵本にはそんな力がいっぱいこめられていると思います。
子ども達にも、そのように読んでいて幸せになれる絵本にたくさん出会ってもらいたいと思います。今の子どもたちの心に沿うのはどんな絵本かな??…考えるだけでワクワク楽しくなってくるのです。
文章/Rumi先生