お山の絵本通信vol.48

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『どんなに きみがすきだか あててごらん』
サム・マクブラットニィ/文、アニタ・ジェラーム/絵、小川仁央/訳、評論社1995年

[ウサギ]

私が短大生の時、友人が留学する妹さんに贈る絵本を買う為に、本屋さんに一緒に行きました。そして、「この絵本やねん。」と手渡されたのが、この本との出会いでした。

このお話は、チビウサギとデカウサギが、どれだけ相手の事が好きかを言い合うというすごくシンプルなお話です。

チビウサギもデカウサギも自分の方が相手の事を好きだと伝えたくて、体全部を使って表現したり、色々な言葉を使って、「すき」の大きさを負けじと伝え合います。こんなにも、相手から愛してもらえ、自分も負けない程、愛していて、またそれを素直に言い合えるのは、なんて素敵なのだろうと幸せな気持ちで読み進みました。最後のページを読み終えると、何とも温かな気持ちになり、一人微笑んでいる自分がいました。

私がさらに惹かれたのは、この2匹のウサギが、親子なのか、友達同志なのか、恋人同志なのか、その関係がはっきりとは分からない所でした。この絵本を読んだ人が、その時の自分の気持ちや状況によって、2匹の関係を自由に想像しながら読むことが出来るのです。

そして私の友人は、2匹のウサギを自分達姉妹に重ね、遠くに旅立つ妹さんに、自分が、どれだけ大切に思っているのかを絵本を通して伝えようとしたのでした。自分の気持ちを言葉や手紙で伝える事も素敵な事ですが、この絵本と、その友人に出会い、絵本に自分の思いを込めて、大切な人に贈るという事もまた素敵な事だと気付く事が出来ました。

言葉や手紙では照れくさくて伝えられない事も、絵本を通してなら、素直な気持ちを伝えられる事もあると思うのです。私もそれから、絵本が伝えるメッセージと自分の気持ちとがぴったりのものを見つけては、友人などに絵本をプレゼントするようになりました。

この絵本は、私にまた一つ絵本の魅力を教えてくれた、大切な一冊です。みなさんは、2匹の関係をどんな風に感じられるでしょうか?

文章/Tomoko先生