お山の絵本通信vol.50

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ないた あかおに』
はまだひろすけ/文・いけだたつお/絵、偕成社1965年

私が幼稚園の先生になって1年目の節分の時期でした。「おにはそと。ふくはうち。」と、おにに対する子ども達のイメージは、悪いもの…恐いもの…ということが最初にきてしまうことが多くありました。そこで、少しでもおにに対するイメージを変えてあげたいと思い毎年、子ども達に紹介している1冊がこの絵本です。

このお話は、心の優しい赤おにが村の人たちと友達になって仲間になりたいという思いから始まります。赤おには村の人たちを家に招待をしますが、おにの心を疑って寄り付こうとしません。そこで、友達の赤おにに知恵をかりて、青おにが悪者になってひと芝居をします。そのお陰で赤おには、村の人たちを助けて、仲良くすることができました。しかし、青おには赤おにのことを思い、旅に出ることを手紙に残し、いなくなってしまいます。手紙を読んだ赤おには、自分のことを思っていてくれた青おにの思いに気付き、涙を流してしまうお話となっています。おにの友情と優しさが描かれていて、初めて子ども達の前で読んだ時に何とも言えないせつない感情と相手を思いやる温かい感情が出てしまい、私自身が涙を流してしまったことを思い出します。赤おにの仲良くなりたいという強い気持ち。青おにの赤おにに対する優しい気持ち。そして最後には、お互いが相手を思いやる気持ちがすごく伝わってきて、未だに、この絵本を紹介する時は目に涙を浮かばせてしまう私です(お恥ずかしい話ですが…)。

読み終った後の子ども達の感想は、まちまちですが、「おにも泣くんやな〜。」「おにさんも優しいなあ〜。」という声が聞こえてきたり、私と同じように、目に涙を浮かばせて見て聞いてくれたり、少しでもおにに対するイメージが変わり、お話の内容が伝わっていることをとても嬉しく思っています。おにのイメージを変えてあげたいと思って紹介していましたが、何度も読んでいくうちに、赤おに・青おにのように相手を思いやる心を子ども達にも持ってほしいという気持ちも込めて、紹介するようになりました。絵本には、それぞれメッセージやたくさんの思いが詰まっていて、受け取り方や感じ方が人それぞれ違い、それもまた、絵本のおもしろさの1つではないでしょうか。これからも、子ども達にたくさんのメッセージが詰まった絵本を紹介していきたいと思います。

文章/Noriko先生