お山の絵本通信vol.60

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『チリとチリリ まちのおはなし』
土井香弥/作、アリス館2005年

[kaisuiyoku

朝、お部屋に着くと「今日のお勧めはこの1冊です」と言わんばかりにピアノの上に絵本が置いてあることがあります。または「これ読んで!」と子どもの手から直接受け取ることもあります。ほぼ毎日のように誰かが絵本を持ってきてくれるので、私の方もうんと沢山の絵本と出会うことが出来ています。時にアニメのキャラクターの図鑑だったりすることもありますが、おうちでどういったもので楽しんでいるのかほんの少し知ることの出来る、お喋りするのとはまた違った楽しさがそこにはあるような気がしています。

今回の「チリとチリリ まちのおはなし」も、そんな今年になって出会った沢山の絵本の中の1冊でした。チリとチリリという女の子が自転車に乗り街でお買い物をしたり、ふと呼ばれたような気がして自転車を走らせると素敵なお屋敷に辿り着いたり、ことりの赤ちゃんが誕生した所に出会うことが出来たりする、絵も内容もとても可愛らしいお話です。

自転車に乗ってこんな素敵な街の中を走れたり、林を進んで行くことが出来たらどんなに楽しいでしょうか。今でも憧れたくなるようなチリとチリリの住む世界、幼い時に出会っていたならば、きっと「こんな所に住んでみたい!!」と夢見たに違いありません。それは、今の子ども達と同様に好きなアニメのヒーローやヒロインをなりたいと頭の中で描いているのと同時進行で、欲張りなようですが小さな私をきっと楽しい気持ちにさせてくれていたことと思います。

またこの絵本は小さな所まで丁寧に描かれています。なので何度読んでも新しい発見があります。思い返してみると、自分がこういった形式の絵本によく魅力を感じていることに気付かされます。

今でも胸のどこかにあった幼い頃ならではの思いの蕾を開かせてくれた、優しくて大切にしたくなる、そんな一冊です。

文章/Kaori先生