お山の絵本通信vol.62

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ごめんね ともだち』
内田麟太郎/文、降矢なな/絵、偕成社2001年

[kaisuiyoku

「ごめんね」という言葉。素直に言いたくても、いざとなるとどうしても喉につっかえて口に出来ない。こんなことが、幼少期の私にはよくありました。

私には2歳年上の姉が1人います。年が近いということもあり、仲が良い分些細な理由からの喧嘩がよくありました。そんな喧嘩をした後に声を掛けるのは、決まって姉の方からでした。さっきまでの言い合いが無かったかのように、あっけらからんと「なぁ、さえちゃん…(姉と私はお互いに名前に「ちゃん」を付けて呼び合っています)」と話し掛けてくれる姉に「まだ怒っているかな…?」と心配していた私は、何度もホッとしたことを覚えています。

しかし、素直に「ごめんね」と言う勇気が私にあれば…。そう思い後悔した日も少なくはありませんでした。「今日こそはきちんと謝ろう」と決意をして口に出した時には「もういいよ」と笑っていた姉。たった一言で心の中がすっきりしたり、また笑い合えたり…。「ごめん」という言葉は、素敵な魔法の言葉だと、私は感じます。

この絵本は、ゲームをきっかけに喧嘩をしてしまった、とても仲良しなオオカミくんとキツネさんのお話です。お互いに心の中では「ごめんね」「また遊びたいよ…」と思い、いつも遊んでいた場所に足を向けるものの、いざとなるとうまく言葉に出来ない。そんなもどかしさや、ある拍子にキツネさんが「ごめんなさい」と言ったことをきっかけに、仲直りが出来た時の嬉しさ。この2つの気持ちがとてもうまく表現されていて、共感出来るのと同時に、『謝る』ことの意味を改めて考えさせられるお話です。

日々の保育の中でも、トラブルがあった後に「ごめんね」「いいよ」と謝り、許してあげられた時の子ども達の笑顔は、とても輝いて見えます。この絵本に出会い、私自身もこの2つの言葉に込められた意味や、それを言葉に出すことの大切さを、改めて子ども達に伝えていきたいと思いました。

文章/Sae先生