お山の絵本通信vol.66

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『モチモチの木』
斉藤隆介/文、滝平二郎/絵、岩崎書店1971年

[kaisuiyoku

幼い頃、本棚から見たい絵本を1冊選び家族に読んでもらう時間が大好きでした。自分のお気に入りの本を何度も選び「またこれ読むの?」と、よく言われたことを覚えています。その本棚の隅にどうしても見ることができない絵本が1冊ありました。それが「モチモチの木」の絵本です。当時の私は、絵本を表紙や絵を見て選んでいたので、モチモチの木の表紙が少し怖く感じページを開けることができずにいました。その様子を母も知っていたので、母がモチモチの木の絵本を本棚から取り出しお話をしてくれました。

このお話は、トイレにも1人で行くことができないおくびょうな男の子豆太が、一緒に住んでいるじさまのために勇気を出します。また、豆太が怖いと思い込んでいるモチモチの木に火が灯り、勇気のある1人の子どもだけに見ることができるとてもきれいなモチモチの木も描かれています。

この絵本を初めて母に読んでもらった時は、すごくドキドキしながら手で目を隠したり、横を向いて絵を見ないようにして母の声を聞いていたように思います。しかし、お話を全部知ると安心したのか次に見る時には、豆太を応援する気持ちになってずっと絵を見てお話を聞くことができ、とても嬉しかったことを覚えています。母が読んでくれたお陰で、モチモチの木の絵本の表紙も怖くなくなり、お気に入りの絵本となりました。また、本棚の隅にあったものを、良く見える場所へ置くようにもなりました。今思えば、母が読んでくれたのは私も豆太のように怖がりな所があったので、怖がらなくても大丈夫ということや勇気を出してみることを伝えるためだったのかなと思っています。

大人になって改めてモチモチの木の表紙を見ると、じさまが豆太を優しく包み、豆太は大好きなじさまに温かく包まれているように思います。この絵本を見ると幼い頃の自分を思い出すことができ、懐かしさを感じる思い出の1冊です。

文章/Noriko先生