『おでんわ るるる』
櫻井あさを/文、いもとようこ/絵、佼成出版社1980年
私が記憶しているのは母に教えてもらったこの絵本の題名と、主人公が猫の男の子で、名前が『ちゃっく』ということ。そして、絵本の表紙の絵がとても印象に残っています。
大人になってから、この絵本のことを母に聞き、家の押入れの中を探しましたが見当たらず、何度も読みすぎてボロボロになってしまい、処分してしまったかもしれない・・・ということでした。
よく読んでもらっていた絵本と聞き、どんなお話だったかとても気になり本屋さんを探しましたがどこにも置いておらず、最近ようやく手に入れることが出来ました。
手に取ったとき、子どもの頃に戻ったように本当にワクワク、ドキドキしながら絵本の世界に入ることが出来ました。
家に初めて電話がひけて、嬉しくってたまらない様子のちゃっく。
早く電話がかかってこないかなあ・・・と心待ちにします。でも、電話番号をまだ誰も知らないことに気づき、急いで紙に電話番号を書き「でんわばんごう とんでけー」と木のてっぺんから紙飛行機にして飛ばします。
そして、最後のひとつは空に向かって・・・
家に帰ってからはリーン リリンとあとからあとから電話がかかってきて大忙し。お友達とたくさんお話しし、その日は大満足でベッドに入りぐっすり眠ることが出来ます。
しかし、夜中にチリリ リと小さな音が聞こえ、ちゃっくは目を覚まします。電話を取ってみると「わたし そらの ほしです」とたくさんの星たちの笑い声が るるる るるる るるる・・・と聞こえてきます。
ちゃっくはお星さまとお話しを楽しみ、幸せな気持ちで電話を切ります。次の日の朝、ちゃっくは胸をことこと躍らせながらお母さんに言います。
「よなかに ぼくんとこに おほしさまから、でんわがかかってきたんだよ」
するとお母さんが言います。「まあ ちゃっく よかったわね。おかあさんも おほしさまと おはなししてみたかったわ」と。
「おほしさまの でんわばんごう しらせてください」と最後はちゃっくからお星さまへのお手紙の絵で、絵本は終わります。
懐かしみながら読んでみると「あっ!このページ覚えてる!!」「そうそう!るるる るるる はお星さまの笑い声だったなあ。」と思い出す事もたくさんありました。
小さい頃の私は、起こりそうにないことも本当に起こる!! と信じていたので、(実は今もまだ少しそういう所は残っているかもしれませんが・・・)ちゃっくのように、もしかしたら自分のところにも「お星さまから電話がかかってくるかも!?」「お星さまの笑い声ってどんなのかな!? 聞いてみたい!」と、ワクワクしながら読んでもらっていたのだと思います。
久し振りに読んでみることで、ちゃっくが窓からお星さまを眺めている絵が何とも可愛くて、更に好きになりました。そして、最後にお母さんが言った「おかあさんも おほしさまと おはなししてみたかったわ」という言葉が素敵!と思い、もっともっと、この絵本が大好きになりました。
ちゃっくのお母さんのように、子どもの純粋で素直な気持ちに、いつでも寄り添える大人でありたいと改めて思う事が出来ました。
先日、子ども達にこの絵本を紹介し、みんなで読んでみました。読み終えた後、「みんなは誰とお電話してみたい?」と問いかけると「僕は恐竜!」「私はプリキュア!」「パパとママとお電話したい!」と次々とお返事が返ってきました。いつかお話し出来たら、きっと、とっても楽しいでしょうね。
ほんわか、やさしい気持ちになることの出来る、おすすめの絵本です。
文章/Mami先生