『番ねずみのヤカちゃん』
リチャード・ウィルバー/文、大社玲子/絵、松岡享子/訳、福音館書店1992年
自ら欲しがって買ってもらったのか、プレゼントだったのか。出会いがどうだったのかは思い出せないけれど、気が付けば我が家の絵本の仲間になっていた1冊です。一旦は手元を離れていましたが、タイトルと表紙を見ただけでお話の内容がしっかり思い出せたので、おそらくかなり読み込んだものと思われます。
ドドさんの家の壁のすき間に住むヤカちゃんはとにかく声が大きく「やかましやのヤカちゃん」と呼ばれていました。そんなヤカちゃん達子ねずみに、お母さんねずみが自分達だけで暮らす為の知恵を伝えます。台所に証拠を残さない、音を立てないなど…。同時にねずみとりや猫についても。でもどうしてもヤカちゃんは声を小さくすることが出来ないので、ドドさん達がヤカちゃん達の存在に気が付きます。そしてねずみとりや猫など対策を講じます。ただそれらもヤカちゃんの大きな声を前に失敗に終わるのですが、ある晩泥棒がドドさんの家に侵入します。その時のヤカちゃんの怒鳴り声に泥棒はびっくりして逃げ出してしまいます。ここから「番ねずみ」として安心して暮らせるようになり、お話は終了します。
最初こそヤカちゃんに少しやきもきするような思いを抱いていた私。子ども達で返事をする時も、ヤカちゃんだけ大文字太字でどんなに大きな声なのか想像しきれません。でも段々読み進めていくと、見ているこちらが楽しい気持ちになり、「そうだよね、言っちゃうよね。」と共感までしてしまっています。また幼い頃はお話の展開に魅かれて何度も読んでいたのだと思いますが、今は読む度に「ものの見方」の大切さを教えてくれているような気がしています。確かにヤカちゃんは大きな声で最初は迷惑なようにも思われていたけれど、その大きな声があったからこそ泥棒を追い出すことも出来たのです。今思っていること、当然と考えていることが必ずしも絶対じゃないのかも…。楽しいお話の中にそんなメッセージも隠されている気がする、そんな作品です。
文章/Kaori先生