お山の絵本通信vol.70

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ぼくにも そのあいを ください』
宮西達也/文・絵 ポプラ社2006年

[kaisuiyoku

今回紹介する絵本は、私の大好きなティラノサウルスシリーズの中の1冊です。この絵本とは、短大の頃何気なく立ち寄った本屋さんで出会いました。強そうなティラノサウルスの絵と題名のギャップに惹かれて読み進めるにつれ、心が温かくなり、熱いものが込み上げてきたことを覚えています。

『この世の中は力の強い者が一番』と言うティラノサウルスが恐れられていた時代から何年かが経ち、年を取ってすっかり力をなくしたティラノサウルス。自分よりずっと小さいマシアカサウルスにバカにされしっぽを噛まれた末、誰もいない所に行こうと決意しました。その先で出会ったトリケラトプスの子ども達は、ティラノサウルスだとは知らずに傷の手当てをしたり赤い実を一生懸命取ろうとしてくれました。その姿がとても嬉しかったティラノサウルスは、子ども達を食べようとするギガノトサウルスから体を張って、何をされても最後まで腕の中で子ども達を守りぬきました。その時、本当に大切なことは『力の強さではなく愛だ』と気付いたティラノサウルス。その愛はしっかりと子ども達に伝わり、大人になったトリケラトプスは、ティラノサウルスと同じように自分の子どもを沢山の愛で守りぬくのでした。

何度読んでも幸せな気持ちになるティラノサウルスシリーズは、誰かを守り、思いやる本当の『愛』を読者に伝えてくれる絵本です。これからも、沢山の子ども達にこの絵本を読み聞かせ、『本当に大切なことは何か』を感じてもらいたいと思っています。

文章/Sae先生