お山の絵本通信vol.71

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『かいじゅうたちのいるところ』
モーリス・センダック/文・絵、神宮輝夫/訳、冨山房1975年

私が紹介する絵本は「かいじゅうたちのいるところ」です。幼い頃、表紙の絵のかいじゅうが怖いという印象が強かったこの絵本。自分で手にとってページを開くまでにとても時間がかかった記憶があります。短大の図書館で見つけ、「懐かしい!」と思い、手にとりました。しかし私は「そういえばどんなお話だったのだろう?」と表紙の印象が残っているだけで、ストーリーを覚えていませんでした。そこですぐに読み返すことにしました。

いたずらっこのマックス。ある日いたずらが過ぎてしまい、おかあさんに叱られ、おしおきとして夕ご飯抜きで寝室にほうり込まれてしまいました。すると、マックスの頭の中では寝室に木が生え森になったり、波が打ち寄せ海ができたり…そして月日が経ち、やっと「かいじゅうたちのいるところ」へ着きます。マックスはそこで出会ったかいじゅうたちをしたがえて、大暴れします。やがて王様になりますが心は満たされません。さびしく思い、やさしい「だれかさん」のところへ帰りたくなり再び、寝室へ戻ると、そこには温かい夕ご飯が置いてありました。

広がるマックスの空想の世界ですが、憧れていただろう王様になれたとしても、どうしても甘えたくなるやさしい「だれかさん」の存在がマックスにとって、とても大切だったようです。マックスの空想の世界にわくわくしながら、最後にはおかあさんの愛情を感じ、あたたかい気持ちにしてくれる素敵な絵本です。

文章/Asami先生