『いいからいいから』
長谷川義史/作、絵本館2006年
この絵本は、おもわず微笑んでしまう私の大好きな絵本の一冊です。登場人物の中に、「いいからいいから」と微笑んでお話するおじいさんが出てきます。このおじいさんを見ていると、ふと自分の祖父のことを思い出します。
私は小さい頃から、祖父母のことが大好きでした。両親が共働きだったこともあり、小学校から帰ってくると祖父母の家に行きいろんなお話をしたり、一緒にテレビを見たり、居間で風鈴の音を聞きながらお昼寝したりと、毎日一緒に過ごしていました。また、小学校に登校する30分前に祖父母の家に行く程、祖父母と一緒に過ごす時間が大好きでした。
私の祖母は、小さい私にたくさんのことを教えてくれました。小さい頃から「やってみたい」「教えてほしい」などいろんなことに興味を持っていた私にとって、祖母の教えてくれたことは、すごく魅力的で楽しかったことを覚えています。
また、私の祖父は、「まあまあ、ええやないか」といつも優しい顔で笑って話すことが口癖でした。私と兄がケンカした時であっても、2人の背中をトントンしながら、優しい言葉で「まあまあ、ええやないか」と微笑んでくれ、なぜかケンカも自然と治まり優しい気持ちになれたことを覚えています。あの頃は、不思議だったのですが、今思うと祖父の話した一言の中にいろんな想いが込められていたんだなぁと感じています。
この絵本に登場するおじいさんと私の祖父の口癖は、また少し違うのですが、どこか似ていて読んでいるうちに優しい気持ちになれます。このお話は、おじいさんの家に鬼がおへそを取りに来たのですが、おじいさんは鬼に対して「いいからいいから」と微笑みながらおもてなしをします。最後には、自分のおへそを取られてしまったのに、鬼のことを怒らず「いいからいいから」と許してあげます。おもしろくて、つい笑ってしまうお話ですが、その中にも広い心を持つ大切さや人を想いやる気持ちが伝わってきて、読み終わった時には、ほっこりとなる絵本です。
私は、このおじいさんのようにこども達にも「いいよ」と許してあげられる広い心や相手のことを想う気持ちを持ち続けてほしいし、これからも、それをこども達に伝えていきたいと思っています。
文章/Chihiro先生