お山の絵本通信vol.80

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ふたりは ともだち』
 アーノルド・ローベル/作、三木卓/訳、文化出版局1972年

今回紹介する『ふたりはともだち』のお話との最初の出会いは、私が小学校低学年の時でした。この絵本は5つのお話に分けられていて、その中の『おてがみ』のお話が国語の教科書に載っていました。確か、記憶では教科書には『かえるくんのおてがみ』という題になっていたと思います。

小学校の時の国語の授業の中では音読の時間がありました。私はその音読が大嫌いでした。毎日の音読の宿題では家ですらすら読めるのに学校の発表になるとドキドキ緊張して読むのにつまってしまう…そんな自分が嫌でした。私の仲が良かった友達は音読が得意でした。そんな友達の姿をいつもうらやましく思っていました。毎日毎日、家に帰るとその愚痴を祖母に聞いてもらい、その度に祖母は「大丈夫、大丈夫。」と励ましてくれましたが、私は正直あまり気が乗らないまま、なんとか授業、宿題の音読をこなしていた記憶があります。しかし、このお話との出会いで私は抵抗を持っていた音読に対して少しずつ感じ方が変わっていきました。

このお話はお友達同士のがまくんとかえるくん、2人の友情を描いています。教科書に載っていた『おてがみ』は、ある日、がまくんが玄関の前で悲しそうに座っていました。かえるくんがその理由を尋ねると、今ゆうびんを待っているのだが、今まで一度ももらった事がない、だから今が1日のうちで一番悲しい時間なのだ、と答えます。しばらく一緒に座っていましたが、突然かえるくんが用事を思い出した、と帰ってしまいます。かえるくんはがまくんのためにお手紙を書き…翌日、かえるくんは嫌がるがまくんを誘って、再び玄関の前でゆうびんを待っているとそのお手紙が届くというお話です。

がまくんとかえるくんのやりとりが、とても純粋で素敵なお話でした。私はこのお話が大好きで何度も何度も自分で読み返すようになりました。2人の関係がただただ「あったかいな」「いいな」という思いがこのお話を大好きにしてくれ、今度は人に聞いてほしいと思いにつなげてくれました。

それから、今まで祖母に聞いてもらっていた音読を家族みんなに聞いてもらいたい! 聞かせたい! と“あさみの音読タイム”と自分で名前をつけ、夕食前に必ず家族みんなに聞いてもらうことにしました。「早くご飯を食べたい!」と言う兄や妹にも手を止めてもらい、自分のわがままにも、付き合ってもらっていました。家族のみんなに「上手だったね。」「よかったよ。」とほめられることでどんどん音読もこのお話も大好きになりました。また放課後には友達と教室に残り、「ちょっと聞いてて。」とお願いをして音読を聞いてもらったのを覚えています。そうすることでだんだん人前で音読することにも自信を持てるようようになりました。さらに学校の机の端には小さな紙を貼り、そこに毎日発表した回数を正の時にして書いて教え、友達と“音読発表競争”をするまでになっていました。そんな楽しみがどんどん増え、私は学校での音読発表もへっちゃらになりました。この経験が「自分の気持ちを伝えたら苦手なことも克服できるんだ」という大きな自信になりました。そして「聞いてほしい」という自分の気持ちを伝えたことで、協力してくれ、あたたかく見守ってくれた家族や友達にはとても感謝しています。

がまくんとかえるくんのように悲しかったり、寂しいときはそれを素直に言い、お互いが親しい関係であることを嬉しく思い、それを素直に伝えること…改めてお話を読み返し、それが大人になり少し難しく思えても、どんなに大切なことであるのか感じさせてくれたとても素敵な1冊です。

何歳になっても自分の気持を素直に伝えることって素敵だなと思います。子どもたちにもそうであってほしいと思いますし、自分もいつでもそうありたいと思っています。

文章/Asami先生