『5ひきのすてきなねずみ ひっこしだいさくせん』
たしろ ちさと/作、ほるぷ出版2010年
この絵本と出会ったのは、私が小学校の低学年の頃だったと思います。その頃は、たくさんの絵本の中の一つと思っていたのですが、高学年になってある出来事をきっかけに自分とスイミーが重なる部分が出てきて、この絵本を大切にしていたことを思い出します。
この絵本を読んだ後、小学生の頃に友達と“ひみつ基地”を作ってわくわくしながら遊んでいた日々の事を思い出しました。
――ある街の古いビルの地下に小さな5匹のねずみが住んでいます。しかし、隣の家に猫が引っ越してきたことで5匹は新しい家を探して、お引越しをする事になります。色々と探しますが、居心地の良い家は、なかなか見つかりません。そして、5匹は街のごみ置き場にやって来ます。
『宝物の山だ!』5匹はそう言って、自分たちの家を作り始めます。ドアを切って床にしたり、椅子を屋根にしてみたり、雨水を溜められるようにしてお風呂を作ったり、5匹は色んなアイディアを出し合い、力を合わせて安全で暖かで、新しい素敵な家を作っていきます。そうして、とうとう5匹の家が完成!!
しかし、そこへ『ニャアオオオオオ!』家の外で大きな猫が、ねずみ達の作った物干しのひもに絡まって動けなくなってしまいます。さあ大変!! 5匹は『どうしよう…』と考えます。『しっぽをちょっとかじってみようか…』『だめだよう』と話し合い、結局5匹は力を合わせて洗濯ひもを噛み切り、猫を助けてあげます。すると猫は『ありがとう。君たちは僕の恩人だ。』とお礼に番犬…ではなく番猫になってくれ、5匹は何もかもが5匹にぴったりの居心地の良い安全で素敵な家を手に入れます。――
私の通っていた小学校の裏山には“ジャングル”と呼ばれる森がありました。休み時間になると、友達とそのジャングルへ行き、終りのチャイムが鳴るまで夢中で遊びました。
“ジャングル”というと、ワニでも出てきそう! と想像しますが今思えばその頃にはどこにでもあった空き地の様な草や木々がいっぱいの場所でした。しかし、小学生の私にとっては言葉通り“ジャングル”であり、毎日学校へ行きながら休み時間にはジャングルを探検していたのです。
中でも“ひみつ基地”作りは本当に楽しかったことを思い出します。木々の間を歩き、少し広がっている良い場所を見つけると、そこが私達しか知らない“ひみつ基地”。枯葉を集めて、ベッドを作ったり木の枝を利用してイスにしたり、窪んだ穴を利用して冷蔵庫にしたり…。友達と話ながら「これは、机ね。」「これは本棚!」「ここには、ブランコ作ろう!!」と周りにある物は何でも使って夢中で作りました。そして、お腹が減ってくると少し歩き、木イチゴを探して食べたり、花の蜜を吸ったり、友達からアケビの採り方を教えてもらい、枝を使って採って食べたりもしました。時には、見たことのない虫と出会い、長い足でホイホイ歩くことから皆で“横断ホイホイ”と名付けたりもしました。給食のデザートをこっそりポケットに入れておき、休み時間に“ひみつ基地”で友達とこっそり食べたり、休み時間だけでは物足りなくなって、学校が終わってからも友達と約束して家から色んな物を持ち寄って集まり、暗くなるまで夢中で遊びました
絵本に出て来た5匹のねずみたちを見て、友達と「楽しい!!」とわくわくしながら夢中で遊んだ時のことを思い出しました。5匹のねずみたちの様に、小学生の私は友達と意見を出し合い、力を合わせ居心地の良い“ひみつ基地”作りに夢中でした。想像を膨らませ、自然の中をのびのびと動きまわり、今振り返ると本当に幸せで貴重な時間を過ごしていたなあと思います。
あの頃は、楽しくて楽しくて気付かなかったのですが、今振り返ると夢中で遊ぶ中で、友達に自分の想いや考えを伝える楽しさを知り、沢山の自然に直接触れることでここからは危ないこと、これは大丈夫なこと!と学び、『これは、食べられるかな?』と疑問に思うことで木の実やきのこについて自然と調べる事が出来ていたことに気付かされました。“ジャングル”に教えてもらったことが意外と沢山あったことを改めて感じています。
お山には、私が沢山のことを教えてもらった“ジャングル”のような自然がいっぱいあります。その中で子ども達は毎日、沢山の“楽しい”を見つけて遊んでいます。私が幼い頃、夢中になって遊んだ様に、子ども達にも幸せを感じる経験を沢山していって欲しいと願っています。そして、大人になった時『あんなことしたよね〜楽しかったよね』と少しでも思い出してもらえたら、こんなに幸せなことはありません。
子どもの頃にタイムスリップしたような、わくわく楽しい気持ちにさせてくれる、そんな素敵な一冊です。
文章/Mami先生