『14ひきのひっこし』
いわむらかずお/文・絵、童心社1983年
今回、私が紹介させて頂くのは、「おとうさん おかあさん おじいさん おばあさん そして きょうだい10ぴき ぼくらは みんなで 14ひきかぞく」で始まる14ひきのシリーズの第1作目である「14ひきのひっこし」です。
私がこの絵本と出会ったのは幼稚園の頃でした。最初はかわいいねずみの絵に惹かれ、この絵本を手に取ったのですが、読むにつれ、物語や優しい文章や絵、そして14匹のねずみ達のかわいらしい姿に魅了されていきました。
今では、全シリーズを集めるほど大好きになり、実家に帰る度に本棚から取り出し、何回も繰り返し読んでいます。この絵本を開けると、お母さんやお祖母ちゃんに読んでもらったことや、お兄ちゃん達とけんかをしながらも兄妹3人で一緒に読んだことなど、大切な思い出が蘇ります。
このお話の登場人物は、もちろん14匹のねずみ達です。頼れる大黒柱のおとうさん、おじいさん、優しいおかあさん、おばあさん。そして10匹のきょうだいねずみ達。一番お兄ちゃんのいっくんから、にっくん、さっちゃん、よっちゃん、ごうくん、ろっくん、なっちゃん、はっくん、くんちゃん、そして一番小さいとっくん。家族全員が森の奥を目指して歩き続け、すてきな根っこを見つけます。そこを気に入った彼らは、力を合わせて新しいお家での生活の準備を始めていく、というお話です。
この絵本は決して文字数が多くはないのですが、いつも長い時間読みふけってしまいます。それは、ねずみ達一匹一匹の表情や行動がとても繊細に描かれていて、全体としての物語の他に、14匹それぞれの物語を楽しむことができるからです。特にろっくんは全体のストーリーが進んでいく中で目立つ存在です。坂道を登るときに一人尻もちをつきそうになったり、ご飯の時にうっかりパンを落っことしてしまったり、おやつをこっそりつまみ食いしたりと、おっちょこちょいな姿やいたずらっ子な姿が描かれ、見ているだけで心がほんわかと温まります。
ろっくんだけではなく、1つのページにねずみ達一匹一匹のストーリーを感じることができ、彼らはきっとこんな会話をしているのだろう、といった具合に、ねずみ達の日常に思いをはせることができます。物語の中で、14匹のねずみ達の自己紹介は一度も描かれていないのですが、ページをめくる度に、それぞれの性格や特徴がわかるようになっていて、愛しさが自然に芽生えてきます。
この個性豊かで、優しく、また協力し合うかわいい14匹の登場人物。私にとっておやまの幼稚園の子ども達とどこか響き合うところがあります。家族や仲間を思いやること、力を合わせること、そして自然と触れ合うことの大切さ。ぜひ、この絵本を通して様々なメッセージを受け取って頂けたらと思います。
文章/Yuuka先生