『かえるのレストラン』
松岡節/文、いもとようこ/絵、ひかりのくに2001年
今回紹介する絵本は『かえるのレストラン』です。私はこの絵本を本屋で見つけて、まず地元の景色や幼い頃のことを思い出しました。その中でも強く私の心に残っている思い出があります。
私は小学生の時、毎日と言っていいほど放課後の時間は家に帰るとすぐ近所の公園などに自転車で出掛けて、友達と暗くなるまで外で遊んでいました。そんな中、ある雨上がりの日に田んぼの中から「ケロケロ」と鳴く声がしました。恐る恐る田んぼの中を覗いてみると、ピョンピョン跳んでいるかえるが沢山いました。その姿を見て友達と「恐い!」と逃げ回っていると、一緒に来ていた上級生のお兄ちゃん、お姉ちゃん達が「大丈夫!触ってごらんよ!」と一匹捕まえたかえるを私たちに差し出してくれました。しかし、私はその場ではなかなか触ることが出来ず、そのまま家にすぐ帰ってしまいました。せっかく優しく差し出してくれたのに、その場から逃げるように帰ってしまったこと、そして恐いけれど少しでも触ってみたかったと思う後悔でモヤモヤとした嫌な気持ちが残りました。
その後もしばらく生き物に触れることはありませんでしたが、小学校にもある池で、かえるや他の生き物が出てくることが当たり前になり、ただ恐いと感じていたものも自然に好きになり触ることも出来るようになりました。しかしその好きになるきっかけとなったのも、ずっとモヤモヤと心に残っていたあの放課後での上級生とのやり取りだったのかもしれないと今は思っています。とても悔しい思いはありましたが、そのお兄ちゃん、お姉ちゃんの姿がとてもたくましく思え、憧れを持つことで「私も今度こそは!」という気持ちが生まれたような気がします。
この絵本はちいさな池を舞台にかえるの店長がレストランを開き、さまざまな生き物がお客さんとして登場します。身近にある自然をよく観察してみると生き物達の楽しそうな会話が聞こえてくるかもしれないとわくわくした気持ちにさせてくれる一冊です。また、お話に出てくる、ちいさな池はお山の幼稚園にも新しく出来た『ひみつのお庭』にも似ているなと感じました。今『ひみつのお庭』にも、かえるやトンボ、その他沢山の生き物が賑やかに出てきてくれています。子ども達は腰を屈めながら夢中になって観察を楽しんでいます。実際に生き物に触ることが少し恐いと思う子ども達もいますが、私の幼い頃に経験したことを思い出すと、今ある環境やまわりの友達の姿が少しでも生き物と触れ合うきっかけになるといいなと思っています。
文章/Asami先生