『おじいちゃんとのやくそく』
石津ちひろ/文、松成真理子/絵、 光村教育図書2014年
私は幼い頃、両親が共働きだった為、幼稚園から帰ると、祖父・祖母と一緒に過ごしていました。祖父・祖母は農業を行っていた為、田畑や山へ行くことが多く、私もよく連れて行ってもらいました。
最近、『おじいちゃんとのやくそく』という絵本と出会い、読む機会がありました。
主人公ののぞみは、幼い頃からおじいちゃんと仲良しで、いつも散歩にでかけていました。おじいちゃんと一緒に過ごし、色々なお話をします。ある日、おじいちゃんが天国へ旅立ち、のぞみは悲しみの中、夢を見ます。おじいちゃんが夢に現れ、おじいちゃんはのぞみに言うのでした。『おじいちゃんの木を おじいちゃんじゃ おもうて、なんでも はなしてほしいんじゃ。』のぞみは、嬉しかったこと、泣いてしまったこと、心配したこと、驚いたことをおじいちゃんの木に何でも話します。おじいちゃんとのやくそく″を守り、のぞみのおじいちゃんを思う気持ちが伝わってくるお話です。
このお話を読んで、私も祖父とやくそく″をしたことを思い出しました。いつもは、祖父・祖母と3人で過ごすのですが、その日は、祖父と私の2人で過ごしました。自転車の後ろに乗って、山の入り口まで行き、そこから、祖父の後ろをついて、山を登り、小屋を目指しました。
小屋に着くと、祖父は山の仕事の準備を行い、私にやくそく″を言いました。
『おじいちゃんが帰ってくるまでは、小屋の近くにいること。遠くへは行かないこと。』
このやくそく″を言った後、祖父は木を切る仕事を始めました。1人でお留守番をするような気分で、小屋の中で遊んだり、小屋の周りで遊んで祖父が戻ってくるのを待っていたように思います。1人で待つという経験が少なくドキドキしていたことを思い出します。
遠くからカンカンカンという音が聞こえてくるたびに、おじいちゃんは、あそこにいる! と思ったり、少し不安になると、大きな声で「おじいちゃ〜ん、いる?」と呼びかけ、「いるよー!!」と、遠くから祖父の声を聞いて安心していたことも思い出しました。ドキドキしていても、草花を摘んだり、おままごとをして遊び、楽しかったことを覚えています。
また、祖父が小屋に戻って来て休憩をした時に、お茶と果物を出してくれました。温かいお茶とおいしいみかんをもらい、とても嬉しかったことも覚えています。
祖父は、寡黙で多く語らない人なのですが、今思えば、あの時の祖父は色々な話を私にしてくれたなと思いました。今までに山で出会った動物の話、木を切る道具の話、木を切らないといけない話など、沢山話してくれました。その時に、木を切らなければ、木と木が重なりあって、木は育たないことを知り、その為に祖父が大事に木を育てていることも知りました。祖父は私に「小さな細い木は、典子が大人になった頃には、大きくなっているから、楽しみにしておきなさい!」と言ってくれて、祖父とやくそく″をしました。大人になると、祖父が大事にしていた山へ行く機会がなかなかないのですが、父から山の様子を聞き、木が大きく育っていることを知ると嬉しく感じます。
この絵本をきっかけに、大人になった今、私も祖父が大事にしていた山へ行き、木の生長を見守りたいと思うようになりました。幼い頃の私と祖父のやくそく″を思い出させてくれた絵本に出会えたことが、とても嬉しかったです。
私も主人公のぞみのようなおじいちゃんを思う気持ちと、おじいちゃんとの思い出をこれからも大事にしていきたいと思います。
文章/Noriko先生