お山の絵本通信vol.124

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『おいていかないで』

筒井頼子/文、林明子/絵、福音館書店1988年

表紙には女の子が1人、裏表紙には女の子と男の子2人が描かれていて、「おいていかないで」という題名だったので、どんな絵本なんだろうという思いでこの絵本を手にとりました。

内容は、2人の兄妹のお話です。お兄ちゃんと一緒に遊びたいあやこ。でもお兄ちゃんはあやこをおいて行こうとします。「わたしもいく! おいていかないで!」と、ついて行きたがります。お兄ちゃんは、色々考えて1人で遊びに行こうとしますが、最後はあやこと一緒に遊びに行く気持ちになって、あやこはとても嬉しそうにはりきってかけだして行くお話です。

お話は短いですが、自分の幼い頃と重なるものがありました。

私は、3人兄妹の末っ子です。兄が2人いて、兄達のやること、兄達の持ち物など、何でも真似をしていたように思います。この絵本と同じように「お兄ちゃん、私も行く!」と言って兄達の後ろをよくついて回っていました。兄妹喧嘩もよくしましたが、一番の思い出は、下の兄について、電車に乗って祖父の家に遊びに行ったことです。子ども達だけで、電車に乗って行くのは初めてで、ワクワク・ドキドキしたことを覚えています。リュックサックに、自分の着替えとお菓子と水筒、お気に入りのお人形を入れて準備しました。

駅のホームで電車を待ち、電車に乗ると景色がとてもきれいでした。「お兄ちゃん! 見て! 見て!」と言って、色々な所を眺めて楽しんで行きました。

駅は二駅なのですが、とても遠く感じ駅に到着してからも、祖父の家までは歩きました。その道のりも長く感じ、リュックサックが重く「あと少し! 頑張れ!!」と兄に励まされて歩いたことが懐かしく思い出されます。兄の後ろをついて歩き、祖父の家に着いた時、兄から「頑張ったな!」と褒めてもらい、祖父から「よく来たね! いらっしゃい!!」と迎えてもらったことが、とても嬉しかったです。兄とはよく喧嘩をして、「ついてくるな。」「家にいろ。」と言われましたが、私のことを見てくれて、一緒に祖父の家までつれて行ってくれたことが心に残りました。私の住んでいた所も祖父の住んでいた所も田畑や山に囲まれていたので、電車は一両編成で一時間に1本しか通らない町でした。当時の交通手段はとても貴重で電車に乗れることがとても嬉しかったです。

「おいていかないで」という絵本を読むたびに、2人の兄との思い出や電車に乗ったことの思い出を振り返ることが出来ます。2人の兄の影響で色々なことにチャレンジをしました。小学生の頃はソフトボールを始め、スポーツが大好きになりました。小・中学生の頃は、1人で新幹線に乗り、東京の親戚の家へ遊びに行きました。大学生の頃は、青春18きっぷを使って電車だけで北海道へ行きました。沢山の経験をして思い出を作ることが出来、1つ1つの思い出が宝物になっています。大人になった今、兄妹3人共実家を離れ暮らし、年に1、2回ほどしか会うことが出来ませんが、当時の話をすると色々なことが笑い話になっています。この絵本に出会って改めて兄妹の思い出を振り返ることが出来ました。

今までの思い出を大切にし、また新しい思い出を作っていきたいと思います。

文章/Noriko先生