『ねずみのかいすいよく』
山下明生/文、岩村和朗/絵、ひさかたチャイルド1983年
この絵本は、私が幼稚園の頃買ってもらった一冊だったということを先日、ゆき組のお部屋で見つけ思い出しました。表紙のねずみたちが、楽しそうに泳いでいる姿を見て魅かれ、そして「私も海水浴に行ってみたいな」と思い、選んだようにも思います。また、このお話は楽しい海水浴だけで終わらず、読み手をハラハラさせることが待っていたので、今でも覚えているのかなと思っています。そして、改めてもう一度読み直すと幼い頃とはまた違う思いが出てきたように感じました。
まずは、お父さんねずみ。子ねずみがたくさんいて大変だと思うことなく、海へ出掛けよう≠ニ決めたこと。そして、子ねずみたちのことを思い、浮き輪を作ってヒモを一人一人につけたこと。危険なく楽しく遊べるようにと思う親心を感じました。次にお母さんねずみ。みんなの為に朝早く起きてお弁当を作ったこと。愛情のたっぷり入ったお弁当はどんなごちそうより、おいしいことでしょう。そして、子ねずみたち。沖へ流されてしまったお父さんを助けようとみんなで考え、力を合わせて救出する様子。親が子を思い、子が親を思うという家族愛をたっぷりと感じ、幸せな気分になりました。
また、表紙の絵では子ねずみたちの浮き輪にヒモがついていて、その先はというと……。ページをめくっていきお父さんがヒモを持っているということがわかりました。危ないからやってはダメではなく、やりたいことはやらせてみせる、挑戦させる。しかし、危険のないように見守る姿をとっているということを感じ取り、子どもたちのやってみたいという気持ちを大切にしたいという思いに共感しました。そして、日頃仲良く、困った時は、家族みんなで助け合うという姿がみられ、そのことが基礎となり、困ったことがあればみんなで話し合い、助け合う、一つのことを乗り越えるということの大切さを感じ取りました。
実際の保育では、なかなかお母さんと離れられなかった子が、お友達に遊びに誘ってもらい、クラスのお友達みんなに頑張ったねと拍手をもらうことにより、自信となって笑顔で登園することができるようになったこと、縄とびが跳べなかった子が、お友達に教えてもらい、みんなに頑張れと応援してもらうことにより跳べるようになったということがあり、周りのお友達の力が、何百倍もの力に変わるということを感じています。また、家族で何でも話し合えるという関係ができているように、クラスでも子どもたちが何でも言い合える、話せる環境がつくっていけるように努めたいと改めて思わせてくれた絵本です。
文章/Tomomi先生