お山の絵本通信vol.137

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ねずみのかいすいよく』 (その2)

山下明生/文、岩村和朗/絵、ひさかたチャイルド1983年


先日、私は軽いつき指をしてしまい、痛みを抑える為にテーピングをしていた。肌色のテーピングをしていたにも関わらず子どもたちはすぐに気付き、「先生、どうしたの?」と尋ね、「痛い?」「骨折れたの?」などと心配してくれた。テーピングをしているから大丈夫だということを伝えていたのだが、私が机を出そうとすると一人の子が「机出すの手伝う!」とやって来てくれた。

「先生手痛いでしょ。みんなでやれば大丈夫!」とその後も何人か来て、助けてくれた。こうして自ら進んで手伝いに来てくれた子どもたちのことをうれしく感じながら、私は絵本通信で紹介した『ねずみのかいすいよく』に出てくるねずみの親子のことを思い出した。お父さんが海で流された時、一生懸命に知恵を出し合い、力を出し合い、勇気を出して父を助けた子ねずみたち。

思い返すと私が子どもたちに助けてもらったことは今回だけではない。ずいぶん以前、足を捻挫してしまった時のこと。発表会に向けてのお遊戯練習のまっ最中であった。座っての私の踊りをしっかりと見て覚えてくれた子どもたちの一人が「私が先生の代わりに前で踊るね」といって、先生役を務めてくれた。一人が二人、二人が三人…と、「次は私も」と先生がたくさんになり、気が付くと全員が笑って踊っていた。

また、これも数年前のこと、私が三日間入院した時にリズムバンドの練習を頑張っていた子どもたち。「先生が寝ている病院まで聞こえるよう、大きな声でみんなで歌っていたよ」「楽器のきれいな音色聞こえたやろ?」と復帰後すぐに言いに来てくれ、「ピアノ弾ける? 無理しないで」「先生なしで一回やってみるからお客さんやって」など、うれしい言葉をたくさんプレゼントしてくれた。

ここぞという時に発揮する力を持っている子どもたち。そんな子どもたちと一緒に過ごせる幼稚園の先生という仕事は本当に幸せだと改めて感じる。そして、そんな子どもたちはまるでスーパーマンのようだと感じ、私も子どもたちにとってスーパーマンのような存在になれるよう、日々努力したいと思う。

文章/Tomomi先生