お山の絵本通信vol.139

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『おおきなおおきな木』

よこたきよし/文、いもとようこ/絵、金の星社2005年

先日、ひみつの森へ遊びに行った時のことです。普段遊んでいる広場に長い長いつるがありました。好奇心旺盛の子どもたちは、なんとか引っこ抜こうと「うんとこしょ!どっこいしょ!」と掛け声を言いながら力を合わせて引っ張ります。どんどんお友達も増えて力を合わせて引っ張りますが、なかなか抜けず困り果てていた時、根っこの部分を見て、ある子が「強い根っこやしなかなか抜けへんなあ」と呟きました。その言葉を聞いて思い出した『おおきなおおきな木』という絵本を紹介したいと思います。

森の中にあるおおきなおおきな木。その木にはおおきなあながあいています。そこにやってきた旅人は、あなの中でひと眠りします。「ぼくがほんとうにやりたいことってなんだろう」と悩んでいた旅人に夢の中でおおきな木は、ちいさな木だった頃のことをお話してくれます。はやく大きくなりたくて焦っていた木。しかし、大きくなるのは簡単なことではなくて、風に吹き飛ばされそうになったり雨に流されそうになったりすることもありました。その中で気付いたことは、“おおきな木になるためにはしっかりねっこをはらなければならない”ということでした。この絵本を初めて読んだ時、なんて素敵な言葉なんだろうと感動したと共に、大切にしていきたい言葉だと感じたことを覚えています。

今子どもたちは、様々な活動やお友達との関わりの中で、子どもたち自身のねっこをはっている途中だと思います。園庭や森で遊ぶこと、お友達と遊ぶこと、出来なかったことが出来るようになった達成感、生き物を育てたこと、嬉しいこと、悔しいこと。子どもたちが経験するひとつひとつが、それぞれのねっこへと変わっていきます。年長児にもなると、「それしたことある!」と、自らの経験から自信を持って活動に取り組むことが出来るようになったり、こういった時はどうしたらいいかと考えて行動に移すことも出来るようになってきます。日々色々なことを経験していく子どもたちはこうしてねっこをはってどんどん大きくなっていくのだろうなと感じます。私は、北白川幼稚園に通っていたのですが、毎日山の上まで自分の脚で歩いて登園したことは卒園してからの学生時代も、先生になって子どもたちを引率しながら登園している今でも誇りに思っていて、私のねっこになっているように思います。子どもたちと過ごす毎日の経験や発見は、とても大切です。私の知らないことは子どもたちが教えてくれることもありますし、一緒に経験して達成感を感じたり、驚くことがあったり、子どもたちが成長していく姿も、ひとつひとつが先生としての私のねっこになっていっています。

子どもたちにとって初めての社会の場である幼稚園で、一番近くで様々なことを一緒に経験していくことのできる先生というお仕事は本当に素敵でとても有難いことだと思っています。いつも思っているのは、毎日楽しく幼稚園に来てくれたらいいな。大好きなお友達と楽しい日々を過ごしてほしいな。ということです。そんな毎日がもっともっと輝くように、子どもたちのこれからが実りあるものになるように、沢山のことを経験して大きくなっていってほしいなと思います。

文章/Mika先生