お山の絵本通信vol.146

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『しんかんくん けんかする』

のぶみ/文・絵、あかね書房2010年

私が今回紹介させていただく絵本は「しんかんくんけんかする」という絵本です。

ある日大好きなかんたろうとけんかをしてしまった新幹線のしんかんくん。初めてのけんかに戸惑いながらも、腹がたってしまい泣きながら家を飛び出しました。出た先で出会う人々に、かんたろうとけんかをしてしまったことを伝えると、「ごめんねってした方がいいよ」とアドバイスを貰います。初めてのけんか。どうやったらごめんねと言えるのかわからないしんかんくん。すると、せんろくんが「ちょっとまった!なんでごめんねっていうんだ?」としんかんくんに聞きます。するとしんかんくんは「みんながいったほうがいいっていうから…。」そのしんかんくんの答えを聞いて、せんろくんは怒ります。なぜかんたろうが怒ってしまったのか、同じことをされたらしんかんくんはどう思うか、せんろくんと話していくうちにしんかんくんは心から謝ることの大切さを学びます。いざ謝ろうとすると緊張してしまうので、練習してみたり、お面を買って顔を隠してみたり…。苦戦しながらも早く会いたい思いから、手作りのお面を作り、かんたろうの元へと向かいます。そして二人は…。

私はこの絵本と出会い、中学時代のことを思い出しました。ある日ちょっとしたことから、仲の良かった友達とけんかをしてしまいました。なかなか「ごめんね」が言えないまま、時が過ぎ、その中で自然とまた話すようになり、以前と同じように遊んだり、一緒に過ごしていました。でも、自分が悪いと思っていながらもごめんねを言えていないもやもやは消えないままでした。そして、卒業式。もう何か月も前のけんかでしたが、ちゃんと伝えたいと思い、その子に「ごめんね。」を言おうとしました。それでもなかなか勇気が出ず、立ち止まったままの私を友達はじっと待ってくれ、「あの時ね…」と涙がでそうになりながらも少しずつ伝えることが出来ました。最後にはわんわん泣きながらやっと「ごめんね」を言うことが出来、友達も少し涙ぐみながら「いいよ。」と言ってくれ、それから十何年たった今でもその友達のことが大好きで、何でも言い合える大切な存在です。

大切だから、仲良しだからこそけんかをしてしまった時にどうしようと悩むこともありますが、心から「ごめんね」をすることで、より相手を思うことが出来たと思います。

毎日子どもたちと過ごす中で、沢山の「ごめんね」「いいよ」をみることがあります。中には、以前の私のように謝りたいけどなかなか言葉が出てこない子もいて、背中を押すことがあります。その時に自分が弱虫だから、勇気が無いからと自分を責めるのではなく、ありのままの自分で精いっぱいの気持ちを伝えていたこの絵本のしんかんくんのような心を皆で大切にしていきたいと思いました。大好きなお友達だからこそ、お互いの気持ちを思いやり、これからも過ごしていきたいです。

文章/Yuuka先生