お山の絵本通信vol.147

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『こんとあき』

林明子/文・絵、福音館書店1989年

この絵本は、私が小さい頃から大好きな絵本で、よく母や妹と一緒に見ていたことを思い出します。イラストも物語も可愛らしく、そして心がほっこりとするお話です。この本を読んでは、「こんな風に私もぬいぐるみとお話したり、お出かけしたりしたいなぁ。」と思っていました。

主人公は、きつねのぬいぐるみ《こん》と女の子《あき》。あきが赤ちゃんだった頃から、こんはいつも一緒にいます。毎日一緒に過ごす中で、ある日、こんの腕がほころびてしまいます。こんの腕を直してもらう為、二人はおばあちゃんの家に向かうのでした。行く途中、色々なことがありながらも無事に到着し綺麗に直してもらうことが出来たのでした。あきのこんを想う優しい気持ち、大切にしたいと思う気持ちを見て、以前にあったお部屋での様子が思い出されました。

ほし組の子ども達もお部屋にいるぬいぐるみ達が大好きで、自由遊びではよく一緒に遊んでいます。お家ごっこに登場したり、ずっと大事に抱っこをしていたり・・・。そんなある日、朝の自由遊びの時に子ども達のお気に入りであったクマのぬいぐるみの腕が少し取れてしまいました。「先生! クマちゃんのおててが取れちゃったよ!」と急いで言いに来てくれた子ども達。その時の子ども達は “どうしよう” と、とても心配している様子でした。私は、「ちょっとお医者さんに診てもらった方が良いね。お医者さんに治してもらおう!」と子ども達に伝えました。「お医者さんに診てもらうの?」「手術するの?」「治る?」と、少し心配そうな子ども達。その日は1日クマのぬいぐるみがなかったので、「もう治るかな?」と何度も聞きに来る子もいて、とても大切に思っていることが伝わってきました。そして、翌日の朝一番に、「先生、クマちゃん治らはった?」と尋ねてくる子がいました。「元気にならはったよ!」と言って、腕が治ったクマを渡すと「うわ〜! 治った〜!」と、とっても嬉しそうな笑顔になり大喜びでした。その姿を見て、私もとても嬉しい気持ちになり、なんだか心が温かくなりました。今でもそのクマのぬいぐるみは子ども達の大切なお友達で、よく一緒に遊んでいます。そして、より大切にする気持ちも持てたのではないかな・・・? と思います。

この絵本通信を書きながら、自分の幼い頃を思い出しました。私もよく妹と一緒にお人形で遊んでいたなぁと思います。ある時は自分の赤ちゃんになってもらったり、ある時は犬のぬいぐるみを自分のペットにしたり。遊びの中ではありましたが、その都度、遊びに入り込んで大切にそして特別に思っていたような気がします。幼い頃を思い出すと、今クラスの子ども達もきっと1つ1つのお人形が特別に思えているのではないかなと思います。それがお人形ではなく、ブロックであったり、電車のおもちゃであったりする子もいると思いますが、特別な夢のような感覚というのは、きっと今の幼稚園の時期だからこそ感じるものなのではないかな? と思います。

毎日子ども達が帰った後、お部屋を整えて、ぬいぐるみなどを並べながら「今日もありがとう。明日もよろしく。」と心の中で思います。子ども達の特別な存在であるものを、私自身大切にするということをこれからも忘れずに、子ども達にも伝えていきたいです。そして、これからも子ども達の特別な思いを一緒に感じ、大切にしていきたいなと思います。

文章/Chinami先生