お山の絵本通信vol.148

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『くろくん と ちいさいしろくん』

なかやみわ/文・絵、童心社2017年

 自分の好きなものや楽しかったことを自由に表現できる、子どもたちも大好きなお絵描き。真っ白だった画用紙が、色んな色のくれよんや絵の具を使って彩られた時にはとても嬉しい気持ちになりますし、子どもたちと一緒にお話をしながら絵を描く時間はとても楽しい時間です。今回は、読み終えた後にはいつも絵を描きたくなってしまう、私も大好きな『くれよんのくろくん』のシリーズから『くろくんとちいさいしろくん』という絵本を紹介させていただきます。

お昼寝中のくれよんたちのもとへやってきたのは、仲間とはぐれてしまったくれよんのしろくん。「どうしよう…」と困り果ててしまったしろくんに、「ぼくらでこのこのなかまをさがしてあげようよ!」と立ち上がったくろくん。探しても探しても見つからないしろくんの仲間たち…。すっかり元気をなくしてしまったしろくんを励まそうと、くれよんたちは白い画用紙を持ってきますが、「ぼくはしろだから、しろいがようしはむりだよ…」と、ますます寂しくなってしまったしろくん。それを見てくろくんは、白い画用紙を黒で塗って、「ぼくのかいたくろいところにすきなえをかいてごらん!」としろくんを喜ばせるのでした。

この絵本を読んで、くろくんたちはとても優しいなとほっこりした気持ちになったのですが、ふと、『くれよんのくろくん』では、くろくんが落ち込んでいたことを思い出しました。改めて読み返すと、色とりどりのくれよんたちが白い画用紙に絵を描く中、「きれいにかいたえをくろくされたらたまらないよ」と言われて、「なんでぼくってこんないろなんだろう」とくろくんは寂しくなっていました。それをなぐさめたのはシャープペンのおにいさん。とあるアイデアで、くろくんもくれよんたちも喜ばせたのでした。そこで優しくしてもらった時の嬉しかった気持ちがあったからこそ、くれよんたちはきっと優しく出来るのだろうと感じました。

そこで思い出した言葉があります。保護者の方からお聞きしたのですが、年長児の男の子が、おうちで「年少さんの時、僕も泣いてたけど、お兄ちゃんたちが繋いでくれたから今度は僕が繋いであげるねん。」と、毎日意気込んでいるとのことでした。そうやって、してきてもらったことを覚えていて次は自分の番だと頑張ろうと思ってくれていることを嬉しく思い、今でも心に残っています。今年も、送迎で引率をしていると、入園当初は特に、おうちの人が恋しくなって涙を流してしまう年少児を見かけます。そんな時よく見られるのが、自分の鞄やポケットから、さっとハンカチを出して「大丈夫?」「もうすぐお迎え来はるで。」と声を掛け、涙を拭いてあげる年中長児の姿です。思い返せば、その子たちが年少児だった頃、涙を流すことがあるとハンカチで拭いてもらって励まされていたこともあったなと思います。そんな姿から、子どもたちの成長を感じられて、見ていていつも胸が熱くなります。

自分がしてもらって嬉しかったことを、相手にも出来るのはとても素晴らしいことだと思います。子どもたちのそんな素直な気持ちを大切に、私自身も心掛けてこれからの毎日も過ごしていきたいと改めて思いました。

文章/Mika先生