『きかんしゃ ホブ・ノブ』
ルース・エインズワース/文、安徳瑛/絵、上條由美子/訳、福音館書店1985年
機関車のホブ・ノブが線路を走っていると、一頭ずつ、動物たちと出会います。最初はこひつじ。次はいぬ。そしてねこ。「ゆうえんちまで、ぼくを のせて」と言われるたびに、ホブ・ノブは「ああ、いいとも」と、貨車にそのお客を乗せていきます。貨車はぜんぶで六台あります。ねこのつぎは、あひる。めんどり。そして、しちめんちょう。四本足が三頭ずつ、二本足が三羽ずつ。この手のくり返しは、昔話の『おおきなかぶ』のように、幼い聞き手にはここちよいものです。
ゆかいな仲間たちは、貨車にご満悦です。前後に話しかけるようなしぐさの絵は、バラエティがあり、どこかユーモラスです。またそわそわとして、ホブ・ノブのことさえ忘れているかのようです。
ところが一つの事件が起こります。機関車がトンネルにさしかかると、こひつじが「たべられてしまいそうだ」と言って、こわがります。すると他の動物たちも、「まっくらな トンネルなんて、いやだよ!」とさけび出すのです。さあ、こういう時は、こまりました。一体どうすればいいのでしょうか?
「トンネルに はいったら、ぼくが きてきを ならしてやるよ。トンネルを でる
までは、ひを どんどん もやして、ひのこを いっぱい はきだすからさ」
機関車はそう約束します。次のページを開けてみると、トンネルの中は別世界。まるで地球の中のマントルを探険しているかのように、幻想的な赤い絵がパアッと広がります。生き物たちは暗闇に散る赤い火の粉の世界に見とれています。汽笛も「ぽー、ぽー、ぽー」と鳴ります。「それで、もう だれも、トンネルをこわがったり」しなくなります。
こうして一行は、無事、遊園地に到着しました。そこでおりた六頭には、それぞれの楽しみが待っていました。もちろん、ホブ・ノブにも。さて、それはなんだったのでしょうか?
機関車との心の交流を描いたこの絵本を読み、私は、グループの引率を思い浮かべました。子どもたちは、四月のあいだにレインコートの日を経験しました。それと同じように気持ちにも雨の日がありました。そんな時こそ、泣く仲間を心配し、気遣いを見せてくれたのが、引率者以上にグループのメンバーでした。だれがというよりも全員が日替わりでです。まるで子どもたちが子どもたちにとってのホブ・ノブでした。
乗り物のようであって乗り物ではないグループ。それを気持ちのよりどころの一つとしてもらえるよう、毎日の安全な引率に加えて、心を砕きたいと思います。
文章/Ryoma先生