『ルラルさんのにわ』
いとうひろし/文・絵、ポプラ社2001年
ルラルさんは自慢の自分の庭をとても大事にしています。その分誰にも入らせないという気持ちが強く、誰かが入ってくると追い払ってしまいます。
ある朝、庭には丸太が・・・しかし丸太だと思っていたものは大きなワニでした。怒ったルラルさんはいつもと同じように追い払おうとしますが、反対に自分が食べられてしまうのではないかという不安から少し様子を見ることにします。
ワニからはその後すごいことを教わります。それは芝生に腹ばいになることでした。お腹がチクチクする気持ちよさにうっとりとしてしまいます。そんなルラルさんはついに自分の庭を開放します。それをきっかけに動物たちが続々と庭に・・・ルラルさんの庭が皆にとってうっとりとする場所になります。
最初はなんだか怒っているような固い表情のルラルさんがだんだん陽気な様子に変わっていくところが見ていてとても面白いです。肩の力が抜け、読み終えるとホッと安心したようなあたたかい気持ちになれる大好きな絵本です。
ある日朝のお始まりをしていた時のことです。突然トンボがお部屋に入ってきました。急なことで皆驚きながらしばらくトンボが飛ぶ様子を見たり、少し恐がる子もいたり・・・その時です。ある男の子が「いらっしゃい!」と言いました。私はその言葉を最初に聞いた時、ハッとしました。私自身お部屋からトンボが出ていくように促そうとしていたからです。自分がしようとしていたことはこの絵本の最初のルラルさんの姿と重なりました。
その後は男の子の一言でそれまで恐がっていた子も一緒に繰り返し「いらっしゃい!」と言ってトンボの姿を笑顔で見ていました。その後は自然に任せていろいろな所を元気に飛び回るトンボを皆で見守り、「バイバイ!」と最後手を振って見送りました。その日はいつもとは違う特別な一日の始まりを過ごせました。
また、他にもこのようなこともありました。私が幼い頃近所で遊んでいた時のこと、田んぼにカエルがいるのを見つけました。私はそのカエルをつかまえてすぐに家に帰りました。そこで母に「家で飼いたい!」と頼みました。しかし母からの返事は「放してきなさい。」の一言。それでもどうしても諦められなかった私は「カエルはここに入れておくんだ。」と空き箱でカエルの家を作りました。その日母は渋々許してくれましたが、結局カエルは翌日放すことになってしまいました。その後も何度も頼みましたが、なかなか許してはもらえませんでした。しかし今度は「田んぼに行ってカエルをお母さんに見せたいんだ。」と母の手を引いて田んぼへ向かいました。母も「いいよ行こう。」と言ってくれ二人でカエル探しに出掛けました。家で飼うということは叶いませんでしたが、母と一緒に見ることが出来たことが何よりとても嬉しく、今でもその時のことが心に残っています。
この絵本を読むと大人が心にゆとりを持つこと、開放的に気持ちを広く持つこと・・・それが子どもにとってどれだけ大事で必要なことなのかということを考えさせられます。
文章/Asami先生