お山の絵本通信vol.155

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ともだちからともだちへ』

アンソニー・フランス/文、ティファニー・ビーク/絵、木坂涼/訳、理論社2003年

今回紹介させて頂くお話は、「ともだちからともだちへ」という絵本です。

とても良い天気なのに一日中着替えもせず“パジャまんま”の姿で、ぼんやり過ごしているクマネズミ。することもない、誰かと遊ぶ約束もしていない、誰も会いにきてくれない…とため息をついたその時、クマネズミのもとに一通のお手紙が届きます。

『クマネズミくんへ…(中略)きみはたいせつなたいせつなともだち。それをつたえたくててがみをかきました。またね!』

差出人の名前が書かれていないこの手紙から物語は始まっていきます。手紙をもらって嬉しい気持ちを抑えきれないクマネズミは10回手紙を読んでから、誰が書いてくれたのか考え出します。そしてまず思いついたのはカヤネズミくん。会いに行ってみるとカヤネズミくんは「ぼくじゃないよ。ぼくは嵐で壊れてしまった屋根を直すのに忙しかったんだ」とのこと。がっかりな気持ちと共に、クマネズミはカヤネズミくんが大変な思いをしていたことにこの時気付きます。そこから一緒に屋根を直し、そしてまたお手紙を書いた人探しを始めます。次の日は夜明け前から起きてカエルさんのもとに行ったり、道ですれ違ったモグラの夫婦に聞いてみたり…。なかなか差出人が見つからないのですが、クマネズミはどこか嬉しそう。

そして次はコウモリくんの所に行きますがコウモリくんはいつかの自分と同じ“パジャまんま”。寂しい思いを抱えていたコウモリくんとの関わりの中でクマネズミは『本当の友達とは?』と考えます。そして、クマネズミはある楽しい計画を思いつきます…。

この絵本を読み終えた時、私は心がほっこりと温かくなり、そして友達に会いに行きたくなりました。この絵本の裏表紙に、“あったかいきもちを「ともだちからともだちへ」、あなたならどんなふうにつたえる?”といった言葉が書いてあります。私なら…と考えだし思ったことは、この絵本のクマネズミと同じで“友達に会いに行く”ということでした。友達の幸せや健康を祈り、想うことも大切だと思いますが、私は会って、顔を見て、一緒に笑い合うことであったかい気持ちを分かちあいたいと思いました。最初クマネズミは「〜してくれるから友達」、「〜してくれないのは友達じゃない」と思い、過ごしていました。しかしこの手紙を通して、友達の大切さに気付いていきます。

日々の子ども達の関わりを見ている中で、涙しているお友達に自分のティッシュをあげたい、でもキャラクターがプリントされているティッシュは自分にとっても大切なもの。どうしよう、とそんな葛藤が表情から見てとれることがあります。お友達を思う気持ちからサッとその一枚を手渡し、その後二人とも晴れるような笑顔で手を繋ぎ、歩いていく…。そんな姿を見ていると、二人であったかい気持ちを伝えあうことが自然と出来たのだなと思い、嬉しくなります。

最後に、このお話の中のクマネズミは、差出人を探す中であることを思います。

『誰かが自分を大切に思ってくれているって、なんだかよい気持ち。そのことを考えると、だんだんと世界中の人が自分を大切に思ってくれている気持ちになってくる』と。

私はクマネズミが感じたこの気持ちを一人でも沢山の子ども達に感じてほしいと心から思いました。友達から友達へ、家族から家族へ、自分から自分へ。あったかい気持ちで溢れる日々をこの幼稚園生活で心いっぱい感じてもらえたらと思います。

文章/Yuuka先生