お山の絵本通信vol.156

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『にじいろのさかな しましまをたすける!』

マーカス・フィスター/作、谷川俊太郎/訳、講談社1997年

子どもの頃に母が買ってくれ、好きだった『にじいろのさかな』。キラキラの鱗を持っているにじうおは、他の魚達にその鱗をあげることをためらっていましたが、みんなに分けてあげることで仲間の大切さや、仲間といる楽しさを知る事が出来ます。そんな『にじいろのさかな』の続編であるこの絵本は、幼稚園の先生になってから知りました。そして今、担任を持たせて頂いているゆき組のお部屋にこの絵本があるので、改めて読んで見ることにしました。

仲間にキラキラ鱗を分けてあげたにじうおは毎日が楽しくて仕方ありません。キラキラ鱗を分けた仲間達とはいつでも一緒です。そんなある日、キラキラ鱗を持っていない“しましまさかな”がやってきました。にじうおの仲間達は「キラキラ鱗を持っていないから仲間には入れない」と追い返します。そんな時、にじうおは昔のことを思い出すのです。キラキラ鱗を他の魚にあげずにひとりぼっちになってしまった昔の自分を。そしてひとりぼっちだった時の気持ちを思い出しました。ある日、しましまさかながサメに襲われそうになった時、にじうおは意を決して助けに行きます。仲間達にも声を掛けて。そして魚達は皆キラキラ鱗がなくても仲間だと気がつくのでした。

私はこの絵本を読んで、一番大事だなと思ったところは、にじうおが昔の自分を思い出すところです。そして、ひとりぼっちだった頃の気持ちを考えたことです。その時間がないとにじうおは勇気を持って、助けに行けなかったと思います。そして、これは簡単そうで難しいことなのではないかなとも思います。「相手の気持ちになって考えよう」「自分がそうだったらどう思うかな」ということを、子ども達にも伝える事があります。子ども達はそう伝えると、うーん、、、と考え、「こう言われると嫌だな」「これは嬉しい!」などと気づきます。相手が友達である時もあれば、お母さんである時もあるし、昆虫や植物である時だってあります。その時間はとても大事だなと思います。

今年の母の日、皆でお母さんに向けてプレゼントを作りました。お母さんの似顔絵の横にイラストを描いていた男の子に「何を描いたの?」と尋ねると、「カメラ!だってお母さんカメラ好きやから。」と嬉しそうに答えてくれました。これも相手(お母さん)の気持ちになっているからだなと感じました。また、「お友達に教えてあげたい!」という気持ちから、つい口調が強くなってしまう事があります。そんな時に、にじうおのようにふと「自分がそう言われたら、、、」と考えると、お友達への伝え方が変わってきます。相手の気持ちになる事で行動や言葉が変わる姿は、普段の保育の中でも見られる事があるので、これからも子ども達には、大切にして欲しいなと思います。

そして、これは子ども達だけではなく、私自身もそうです。「これをしたら楽しいかな」「今、どんな言葉をかけて欲しいのだろう」「この時はどんな気持ちだったのだろう」と、立ち止まって、子ども達の気持ちになり、毎日を過ごしていきたいです。

文章/Chinami先生