『はじめてのおつかい』
筒井頼子/文、林明子/絵、福音館書店1977年
「みいちゃん、ひとりで おつかい できるかしら」「ひとりで!」――ひとりでおつかいなんて、嬉しくてワクワクするような、でもちょっぴり不安でドキドキもしてしまう…そんなはじめてのおつかい。読んでいて、みいちゃんを応援したくなる、そしてなんだか自分の小さい頃を思い出して懐かしくなってしまう、そんな大好きな絵本、『はじめてのおつかい』を今回は紹介させていただきます。
主人公のみいちゃんは、お母さんから赤ちゃんの牛乳を買ってくるよう頼まれました。はじめてのひとりでお買い物です。お店へ行くまでの道のりは、自転車が速くてどきんとしたり、坂道で転んでしまって100円玉を落としてしまったり。それでも立ち上がってお店へたどり着いたみいちゃん。しかし、お店では大きな声を出すことにドキドキしてしまいます。勇気を振り絞って大きな声で「ぎゅうにゅう くださあい!」と言えたみいちゃん。無事に牛乳を買うことも出来、坂の下で待っていたお母さんに会えた時にはきっと嬉しい気持ちでいっぱいだったのではないかと思います。
私は、自分がはじめてのおつかいをした時の記憶ははっきりとはないのですが、おつかいを頼まれるととても嬉しかったことを覚えています。むしろ、行きたくて行きたくて仕方がなかった方で、何か必要なものがあることに気付くと、「わたしが行ってこようか?」「それ買ってきてあげる!」と自分から進んでおつかいに名乗り出ていた記憶もあります。
そして、私はこの絵本を読んでいて、幼稚園でのお当番さんを思い出しました。毎朝、おうちからのお手紙をお当番さんの2人が園長室まで届けてくれます。年少児は、少し園生活に慣れた5月頃からスタートしたのですが、お当番さんになった日の子どもたちのキラキラした目と、次はいつ順番が回ってくるのだろう? とワクワクしている周りのお友達の様子が、とても印象的です。「行ってきます!」と元気いっぱいの子どもたちですが、「お当番さん、よろしくね。行ってらっしゃい!」と見送る私は、お当番さんがスタートした頃は、大丈夫かな、しっかり届けられるかな、道は分かるかな、とドキドキした気持ちで、こっそり様子を眺めてしまうこともありました。それでも子どもたちは、「ただいまー!」「出来たよー!」と、笑顔いっぱいに帰ってくるので、いつも良かったなとほっとしています。
以前、お当番さんがいつもより帰って来るのが遅く、大丈夫かなと心配したことがありました。「大丈夫だった?」と聞くと、「あのな、ひまわりの芽が出て来ててん。」「ちょっとクロッカスが大きくなってるかどうか見てた!」と、道中での発見や観察を楽しんでいる様子でした。またある日は、帰ってきたところで、「先生、○○ちゃんちょっとこけちゃったんやけど、泣かんと帰ってきた! えらかった! 血も出てないし大丈夫!」とペアの子のがんばりを伝えてくれたことがありました。一人では立つのが難しかったかも知れないことも、励ましてくれるお友達と一緒だったからこそ、頑張れたのだなあと感じました。そして、全てに先生が関わるのではなく、子どもたちだけでもそうやって解決したり、相手のことを思い、考えて行動する姿に成長を感じられ、嬉しく思ったことを覚えています。
はじめてのことをお願いする時は、どうしても、大丈夫かな、出来るかな、危なくないかななどと思ってしまうこともありますが、子どもたちのやりたい気持ちや、力を信じて、色々なことに挑戦する機会を作っていきたいなと改めて思いました。
文章/Mika先生