『ゆうきをだして!』
くすのきしげのり/原作、いもとようこ/文・絵、佼成出版社2011年
本屋さんで“ゆうきをだして!”という題名を見て、この絵本を手に取りました。幼稚園でも《勇気》を出す場面は沢山あります。なかなか勇気が出なかったけれど、友達に励まされて挑戦出来た子、勇気を出して初めてのことに挑戦した子、そんな姿やその時の子ども達の気持ちが思い浮かぶような物語です。
土の中にいる球根。「きみはまだ芽を出さないの?」とモグラ達に聞かれても、球根は「このままでいい。」「土の中でこうしているのが楽しいんだけど・・・」と言います。そんな球根をおひさまはゆっくりと、そして沢山暖めます。ようやく土の上に顔を出した小さな芽。ですが、大きくなることにドキドキしています。そんな小さな芽に今度は雨が優しく降り注ぎました。雨やおひさま、植物達に励まされながら、ようやく立派なチューリップとなりました。大きくなることにドキドキしていた球根ですが、チューリップになってみると楽しいこと、嬉しいことが沢山あったのです。
幼稚園には、子ども達にとっての初めてが沢山あります。初めての友達に初めての先生。ドキドキすることも沢山です。「勇気を出して!」と言葉だけで言われても、そう簡単に出せるものではないと思います。友達が手を差し伸べてくれたり、「大丈夫だよ。」と声を掛けてくれたり、また、頑張っている友達の姿を見たりすることで少しずつ勇気が湧いてくるのではないかなと思います。
4月当初、初めての幼稚園にドキドキし、お母さんと離れた寂しさで涙がなかなか止まらない子がいました。そんな時に、隣にいた友達がティッシュを取りに行き、自ら涙を拭いてくれたのです。涙を拭いてもらうと少しその子の気持ちは落ち着きました。きっと友達の優しさに励まされ、勇気も出たのではないかなと思います。
また、この絵本の中で、球根が「このままでいい。」「こうしているのが楽しいんだけど・・・」と次の一歩を踏み出すことにためらっている場面があります。大人の私でもそうですが、初めてのことに踏み出す時は、とてもドキドキするし、不安にもなります。そんな時に周りの人達の言葉に励まされたり、友達が頑張っている姿を見たりして「よし、私も頑張ろう!」と勇気をもらいます。
これも4月当初のことですが、みんなの輪に入って身体を動かしたり、ゲーム遊びをしたりすることに少し戸惑い、ドキドキする子がいました。最初はみんなが楽しんでいる姿をじっと見つめていましたが、ある時、友達から「○○ちゃーん!」と名前を呼ばれたことで、嬉しそうな笑顔で輪に入ることが出来ました。輪に入った後の姿は本当に嬉しそうで楽しそうで、私もとても嬉しい気持ちになったことを覚えています。一歩を踏み出すまではドキドキするけれど、勇気を出してその一歩を踏み出してみると、楽しいことが沢山待っていたということはこの絵本の最後とも共通しているなと思いました。
私はこの絵本を読んで、物語の途中に出てくるおひさまや雨がとても大切なように感じました。おひさまはゆっくりとそして沢山球根を暖めてあげています。そして雨は優しく降り注ぎます。子ども達が勇気を出して色々なことに挑戦し、勇気を出して良かった! と思えるように、私もそれぞれの子ども達のペースを見守りながら、ゆっくりと暖かく励ましていきたいなと思います。そして、勇気を出せた時の嬉しさや楽しさをこれからも沢山共感していきたいです。
文章/Chinami先生