『14ひきのあきまつり』
いわむらかずお/文・絵、童心社1992年
お父さんにお母さん、おじいちゃんにおばあちゃん。そして兄弟10ぴき四季折々の自然の風景を舞台に「14ひき」のねずみの大家族が活躍するシリーズの一つをご紹介します。
「14ひきのあきまつり」の舞台は、すっかり秋の色に染まった森の中。秋の紅葉している様子が事細かに描写されており、1ページ1ページめくることが楽しみになります。また、表紙の次のページにはいろいろな種類のきのこと名前が描かれており、このきのこは、どのページにでてくるのかな? こんな名前のきのこがあるのだなとついつい探してしまい、きのこ博士になったようにさえ感じてしまいます。
お母さんたちが木の実を採りに行っている間、子どもたちとおばあちゃんは一緒にかくれんぼをします。「もういいかい」「まだだよ」。葉っぱやかごの後ろ、地面にかがみ込んで隠れているのをさっちゃんが次々と見つけていきます。みんなが見つかっていく中、ろっくんだけが見つかりません。いったいどこにかくれたの? と読み手までハラハラドキドキさせられ、絵本の中を探し、まるで一緒にかくれんぼをしているかのように感じます。
兄弟とおばあちゃんがろっくんを探しているうちにどんどんと森の奥へ入り、そこで出会ったのは、くりたけきょうだい。駆け出したくりたけきょうだいに付いて行くとお祭りが始まります。きのこのおみこしに、かえるのお囃子。思わず「わっしょい、わっしょい」と叫びそうになります。そして、突然の嵐に世界が変わり、いつもの静かな森に戻ります。
隠れていたろっくんも無事に見つかり、ようやく終わる長い長いかくれんぼ。この森での不思議な出来事は、昔話のようでとても印象深く感じます。最後は、家族みんなで食卓を囲み、実りの秋、森の恵に感謝してお話が終わります。
この話を読むたびに今すぐにでも子どもたちと一緒に森に出掛けたくなります。森に出掛けると「かくれんぼしよう!!」と早速絵本と同じように始め、木の後ろに隠れたり、葉っぱを布団のようにかぶせて隠れてみたりする子どもたち。また急斜面を使って、滑り台のようにして遊ぶ様子、袋いっぱいにどんぐりや実を集め「おみやげにするの!!」と笑顔でお話してくれる様子。きれいな石を見つけ、「この石は恐竜の化石みたい」と教えてくれる様子。たくさんの笑顔がこぼれ、自然にあるものを上手く利用し、遊びに変える子どもたちの姿は、この絵本に出てくるねずみの子どもたちの様子と重なります。
これから、どんどん深まっていく秋。絵本のようにみんなで囲んで楽しいお弁当の時間を過ごし、また秋の自然を体いっぱいに感じとり、森でしか味わえない体験もたくさんたくさんしていきたいなと思います。
文章/Tomomi先生