『せかいの はてって どこですか?』
A・トゥレッセルト/文、R・デュボアザン/絵、三木卓/訳、童話館出版1995年
今年は早くに梅雨が明けました。そこで一気に夏の季節が訪れましたが、ひみつの庭のビオトープではカエルの鳴き声が元気に聞こえています。そんなカエルが出てくるお話を紹介させて頂きます。
井戸の中に一匹のカエルが住んでいました。カエルはずっと前からいるその井戸がとても居心地がよく、世界の全てだと思っていたのです。しかしある時、井戸の水がなくなってしまったことでそこで住むことが不可能だと分かり、飛び出すことにしました。外へ出たカエルは初めて見る景色に興味を持ち、やがてさまざまな動物たちと出会うことで自分の元にいたところが全てではなく、世界はもっと広いということを実感していくのでした。
この絵本を読んでいると、新たに踏み出した世界には素晴らしいものが待っているんだよと思え、わくわくした気持ちになります。そして新たな世界をどんどん進んで行くカエルの姿は幼稚園で過ごす子ども達の姿と重なりました。
ある日、運動あそびで平均台に取り組んでいる時に突然涙を流した子がいました。何か困ったことがあったのかな、手を貸した方が良いのかなと思って駆け寄りましたが、なんだかそうではないようです。その子は何度も「初めて乗れた!」と言っています。まわりにいたお友達も「私も手伝ってあげたんだ! すごいね。」と嬉しそうです。それまで「恐い、行けない。」と足がすくんでしまうことがあり、少しずつ上に乗って進む練習中だったその女の子。しかしその日は違いました。お友達に力を分けてもらって、自分で進むことが初めて出来たのです。自分の力の可能性を広げて、出来た! と喜びの涙を流せたその出来事はその子の大きな一歩でした。
また、ひみつの庭の畑で育てている野菜にお水やりをしていた日にある男の子が「ナス苦手や、食べられへん。」と言っていることがありました。その後大きく成長したナスは調理をしていただきましたがその子は調理中も「食べられるかな。」と話すことがあり、不安な様子でした。しかし出来上がったものを一口食べてみるとパッと表情が変わりました。「美味しい!」と一言。それから「ナスって食べられるんや。」と驚きの表情が見られ、おかわりをする程美味しかったようでした。また他には「初めて食べた!」と言う子や、中には「少し食べてみたけどやっぱり食べられない。」という子もいました。しかし苦手だからといって全く手を付けないということはなく、まずは一口食べた子ども達。そうしたことで意外と美味しい、あるいはやはり苦手だということを改めて知ることが出来たのです。どちらもそれぞれがまた新たな一歩だと感じました。
何となく自分の出来ることはここまでなのかなと初めから決めてしまっていることがあるかもしれません。しかし、幼稚園で過ごしている中で子ども達の出来る可能性や持っている力は無限であるなと日々感じられていること、世界が広がるその瞬間に立ち会えることを嬉しく思います。また明日からの夏休み、そしてお休みが明けた新学期からの幼稚園生活でも子ども達にはそれぞれの新たな出会い、経験を楽しんでもらえたらと思っています。
文章/Asami先生