『もりのかばんやさん』
ふくざわゆみこ/文・絵、学研プラス2020年
秋色の表紙、そして森の動物たちの仲間のつながりが感じられる温かい雰囲気の絵柄に、魅かれ、手に取った絵本です。
はりねずみのハリハリが店長を務める、もりのかばんやさん。いろいろな種類、いろいろなデザインのかばんがたくさんあり、いつもお客さんでいっぱいの素敵なお店です。ある日新しくかばんを作って欲しいというお客さんがやってきて・・・。そして、ハリハリに憧れていた弟子のくもくんも加わり、使う相手のことを第一に考えた、思いやりいっぱいのかばんが次々と出来上がっていきます。
私も幼稚園時代、お気に入りだったかばんがあったことを思い出しました。私の好きなキャラクターの生地を使用し、たくさん物を入れても破れないよう、頑丈に作ってくれた母手作りの物でした。どこへ行くのにもそのかばんを持って行き、いつでもどこでも一緒だったように思います。
また、絵本の題名である“もりのかばんやさん”と聞いてお店屋さんつながりから、来月行われるお買い物ごっこのことが頭に浮かびました。毎年子どもたち一人一人の工夫が入った品物がお店に並べられていたり、使い方や遊びかたを丁寧に説明してくれるお店やさんがいたり・・・。工夫と思いやりいっぱいのお店がたくさん開かれます。その中でもいつも以上に早く品物が売れてしまったお店やさんがあったことを思い出しました。お客さんが来てくれても売る物は何もなく「売り切れました。ごめんなさい。」と子どもたちなりに精一杯考えた言葉で来てくれたお客さん一人一人に伝えていました。すると、一人がきれいな落ち葉を見つけ、机の上に並べ始めました。「これは葉っぱうさぎです。」「これは葉っぱのおにぎりです。」「これは葉っぱパンです。いかがですか。」などと落ち葉を動物や食べ物に見立て売り出しました。再び、お客さんであふれたお店になったことは言うまでもありません。子ども達の1つの工夫で、そして買いに来てくれたお友だちのことを思う気持ちでまた新しいお店ができ、私自身が大切なことを子どもたちから教えてもらった素敵な一日となりました。
この絵本の最後のページには、森の動物たちみんながハリハリが作ったかばんを大切に持つ様子が描かれ、みんなから“もりのかばんやさん”が愛されているということが、伝わってきました。そんな絵本の“もりのかばんやさん”のようにみんなが一人一人を大切に出来るクラスをつくり、ハリハリのように工夫する楽しさを絵画や製作、あそびの中にもどんどんと取り入れみんなで一緒に味わっていきたいと思いました。
文章/Tomomi先生