お山の絵本通信vol.201

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ぼくの! わたしの! いや、おれの!』

アヌスカ・アレプス/文・絵、ふしみみさを/訳、BL出版2021年

 今回紹介させていただくのは、あるジャングルの奥に住む5頭のゾウが、力を合わせることの大切さを知る素敵なお話です。

ジャングルの奥に住んでいるのは、くだものが大好きな5頭のゾウ。マンゴー、ココナッツ、キウイフルーツ、バナナ、パイナップルと、それぞれに大好物のくだものがあります。ある日、ゾウたちは珍しい木を見つけます。その木の高い枝には、たまらなく美味しそうなくだものがなっているではありませんか。ゾウたちは「僕が食べる!」「私が食べる!」と、それぞれ持ち前の力を活かして美味しそうなくだものを我が先に収穫しようとします。しかし、自慢の鼻で力いっぱい吹いてみても、飛びながらとろうとしても、木に一生懸命よじ登っても、全速力で木に突進しても、美味しそうなくだものは全くとれる気配がありません。我慢できないゾウたちが「ぼくの!」「あたしの!」と押し合いへし合いしていると、目の前を小さな5匹のネズミがあのくだものを運んでいきます。「すごいでしょ、みんなでとったんだよ!」と言うネズミの言葉を聞いて、「……みんなで?」と顔を見合わせるゾウたち。みんなでとればいいことに気付くことが出来ました。その後は、それぞれの力を合わせて、無事にくだものをとることが出来、ほっぺが落ちそうなくらい美味しいくだものをお腹いっぱい食べることが出来ました。

私は、この絵本を読んだ時に、なんだか幼稚園の子どもたちのようだなと思いました。思い浮かんだのは、運動あそびでのとあるシーンです。しっぽ取りに挑戦していたある日。先生対子どもたちで始まったしっぽ取り。まだまだ不慣れだった子どもたちは、先生に向かっていく度、次々としっぽを取られてしまい、仲間がどんどん少なくなっていってしまいました。残っている子どもたちは、自分のしっぽは取られないようにと上手くすり抜けて逃げることは出来ましたが、取られてしまうかもしれないと思うと、なかなか先生に立ち向かっていくことが出来ません。このまま終わってしまうのかと思われた時、「みんなで!」という声援を受け、残ったみんなで勇気を出して、一斉に先生へと立ち向かい、見事にしっぽを取り、勝利することが出来ました。

“みんなでやったら出来たんだ!”という経験は子どもたちにとっても、大きな出来事だったようで、この日のお弁当の時間は、「勝ったよね!」「みんなでね!」と、しっぽ取りの話題で持ち切りでした。

それからというもの、しっぽ取りをする度、子どもたちは物凄いスピードで先生たちのしっぽを取っていきます。初回の、あの物怖じしていた様子はどこへいったのだろうと思われるほど、果敢に立ち向かっていく姿が見られるようになりました。2人、3人だけの力ではなく、クラス全員、学年全員の力を合わせたら絶対勝てると自信たっぷりの子どもたち。しっぽ取りに限らず、ドッジボールなどの勝負ごとでは、誰の掛け声で始まるのか「集まって!」「集まって!」とみんなで円陣を組んで、「エイエイオー!」と気合を入れてから取り組むのが恒例となりました。

幼稚園の生活の中では、みんなで力を合わせることが沢山あります。運動あそびだけでなく、一日の様々な活動の中で心を合わせて、力を合わせていくことで、より一層楽しくなっていくことでしょう。歌を歌う時にも心を通わせ、みんなの声が一つになった時には、子どもたちから非常に大きなパワーを感じます。そんな時の子どもたちの歌い終えた後の表情はとても晴れやかで、子どもたち自身もパワーを感じたんだろうと思います。先月からスタートした新しい1年。まだまだ楽しいこと、ワクワクすることが沢山あります。これからも、クラスのみんなと、学年を越えて幼稚園のみんなと心を通わせ、力を合わせて、様々な経験をしていってほしいなと思います。

文章/Mika先生