『わすれられない おくりもの』
――スーザン・バーレイ/絵文、
小川仁央/訳、評論社1986年
幼い頃、毎晩母の読んでくれる絵本を楽しみにしていました。中でも一番よく読んでもらったのが「三匹の子ぶた」。
完全に暗記してしまった私は、母の読み間違いを指摘するほど大好きで、今では思い出の一冊です。
しかし、このお話は皆さんがよくご存知だと思いますので、今回は私が幼稚園にお勤めしてから出会った、心に残る絵本の中から、一冊ご紹介いたします。
「長いトンネルのむこうに行くよ さようなら アナグマ」
大好きだったアナグマはもういない。しかしみんなの心の中には今も生きつづけている、やさしいアナグマとその仲間の、心通うお話です。
物知りでやさしいアナグマはみんなからとても頼りにされていました。そんなだれからも慕われていたアナグマは、冬の初め年老いて死んでしまいます。
かけがえのない友を失い、野原の仲間たちは悲しんで、途方に暮れます。
しかし、春の訪れとともに、みんなはアナグマとの思い出を少しずつ語り始めていくのです。アナグマはひとりひとりに、別れた後でも、宝物となるような知恵や工夫を残してくれていたのです。
アナグマが残してくれたものの豊かさで、いつしか皆の心の悲しみは消え、姿が亡くなっても、心は残るということに気付き、元気を取り戻していくのです。
「ありがとう! アナグマさん」
皆はアナグマからのわすれられないおくりものへ感謝しました。
友だちの素晴らしさ、生きるための前向きさを、静かに語る一冊です。思わず故郷の両親や、天国の祖母を思い出し涙してしまいました。子どもから大人までジーンと心にしみる絵本です。
文章 ゆみ先生