福西です。この日は、前回の「円」のおさらいをしてから、「分数」を取り上げました。
円は、輻射(自転車のタイヤのスポーク)状に細かく切って並べ直すと、たてが「半径」、横が「円周の半分」の長方形に直ります。そして円周は「直径×円周率」なので、それを代入すると、「円周の半分」=「直径×円周率÷2」と表せます。つまり、円の面積とは、「半径(たて)」×「直径×円周率÷2(よこ)」となります。
ここで、さらにもう一工夫します。いま、「÷2」という表現が出てきましたが、これを「直径」とセットにすると、「直径÷2」=「半径」のことになります。よって、円の面積は、おなじみの公式である「半径」×「半径×円周率」となるわけです。
このような説明が自分でできることを授業で見ました。
さて、ここからが今回の授業のメインです。(以下のことは、私から一方的に説明するのではなくて、実際に生徒たちに立ち止まって考えてもらいました)
問い:0.1や0.333といった数の住んでいる国を「小数の国」、1/3や3/2といった数の住んでいる国を「分数の国」としたとき、一体どちらの国の方が広い(おおぜい住んでいる)か?
疑問:もしどちらかの国の方が広いのなら、もう片方は考える必要はないのではないか?たとえば、もし小数の国の方が広いのなら、(計算のややこしい)分数など考える必要はないのではないか?
問いに対する直感的な答は、みなさん、どのようなものでしょうか。
「小数の国の方が広い」とした人は、おそらく、小数が「無限に小さい値を表現できる」という点に注目したのではないかと思います。
一方、「分数の国の方が広い」、あるいは「同じ」とした人は、以下のようなことを考えたのではないでしょうか。
「0.1=1/10
0.01=1/100
0.00123456789=123456789/100000000000
・・・
このように、どんな小数でも、分数になおすことができる。だから、ここまでは小数の国と分数の国は同じ。
しかし、1/3=1÷3を計算すると、出てくる答えは、0.3333333・・・。
もしこの「・・・」と無限に続く数を「小数」と呼ばないとするならば、分数の国には1/3があって、小数の国にはそれに対応する数がないことになる。よって、分数の国の方が広い」
と。
実は、「問い」に対する答は、「小数とは何か?」という定義によって変わってきます。
小学校の範囲では、0.333や0.33333333など、どこか有限の位で打ち切った数のことを「小数」という、と、はじめに習います。この定義では、上で考えたように、
小数の国<分数の国
という広さ関係になります。
しかし、すぐに0.33333・・・といった数が登場します。「・・・」がくせもので、無限に続くことを意味します。もしこれを小数の仲間に含めるとすれば、
小数の国=分数の国
という関係になります。(どちらにも、お互いに対応する数が存在する)
さて、小数と言えば、0.333ないし、0.333・・・のようなパターンだけでしょうか?
たとえば、1/7を考えてみます。
1/7=1÷7=0.142857142857・・・
これは、1、4、2、8、5、7が繰り返しています。0.333・・・のような、1つの数が繰り返す場合だけでなく、このようにいくつかの「数の束」が繰り返す場合もあります。
7で割った場合は大変に面白いので、ついでに他の場合も見ていきましょう。
2/7=0.285714285714・・・
3/7=0.428571□□□□□□・・・
さて、ここで気付くことがあります。それは、2/7も、3/7も、やはり「1、4、2、8、5、7」が「ずれたところからまた同じようにならんでいる」ということです。
では、4/7だと、どうなるでしょうか。これは次の数が予想できるでしょうか。
4/7=0.5□□□□□・・・
そうです。1、4、2、8、5、7の並びを見れば、「5の次は7」と予想できます。ということは、
0.5 7 14278 5・・・
となります。
では、小数は、このような数だけでしょうか? 他には考えられないでしょうか? もしないのだとしたら、最初の「小数の国の方が広い」という直感は、間違いだと言えるでしょうか?
そこで、円周率を思い出してください。
この数は、実は「無限に続く」だけでなく、「その並び方も無限にばらばら」であるような数なのです。また、そのような数は、一辺の長さが1の正方形の対角線の長さ(√2)など、「無数」に存在します。
一方、分数ではどんなにがんばっても、そのような数を表すことはできません。
ということは、その数がいる分、小数の国の方が「広い」ことになります。
まとめると、次のようになります。
1)小数<分数 0.333など、有限打ち切りの数を「小数」と呼ぶ場合
2)小数=分数 0.333・・・(=1/3)や0.142857・・・(=1/7)など、「有限」の長さのパターンが「無限」に繰り返す数も、「小数」に含める場合
3)小数>分数 3.141592・・・といった、「無限」の長さのパターン(つまり不規則な並び)が無限に続く数も、「小数」に含める場合(この時の小数を「実数」といいます)
(「その2」へ続く)
“かず6年(0424)(その1)” への1件のフィードバック