受講生の方がご寄稿下さいましたクラスの感想文をご紹介致します(2014.02.24)。
(過去寄せられた感想文は、こちらに掲載させて頂いております。→「会員の声」)
John S. Mill「自由論 (On Liberty) 」を読んで
2013年春~冬学期間にて本書を完読いたしました。訳本は岩波文庫にて塩尻公明、木村健康訳が出されています。講読中、訳本は見ないことを自主ルールとしました。完読後、訳本を見て思ったことは、「原書で読んでなかったとしたら、得るものが今よりずっと少なかったにちがいない」ということです。
本書は1859年に出版された本で、冒頭部「この問題はこれまであまり語られてこなかったし、もっとも一般的な言葉では議論されてこなかったのですが、深く実社会に影響して、しかも隠れた存在というところから、おそらくは今後重要な将来の問題として認識されると思われます。」との記載があり、広く一般に読まれるために書かれたことをうかがわせます。
極めて少ない一部の書については、読書にて自分の思想の根幹部分に共鳴し、それに一体化するものがあると感じます。本書はまさにそういう書であったと感じました。一般には古典と言われる書がこのような書に当たるでしょうか。また、書に接するときに自らに何か関与した問題意識があるとその共鳴の振幅が更に大きくなると感じるのは私だけではないでしょう。
自由というのは広い範囲の問題です。社会に生きている限り、不自由と対をなして何か感じるところがあると思います。ミルは一つの物差しを提示してくれます。そこに自分の疑問をあてがっていくと自分の感情が一つの学問上の物差し(理論)の上に整理されてきます。物差しから外れるものには再びそこに何故かという問題が提起されてくるのです。こうして思考は個人的体験や感情と少し距離をとり、そして次の課題に進むことができると感じます。知識や人としての知恵を育むことができていくことを改めて強く感じました。
世界一級の著者と直接対話すること、直接問題を投げかけることができ得たのです。山の学校のこの場が私をそこに座することをさせてくれたのです。日本中を探しても恐らくこの様な体験をさせてくれる場はないことでしょう。深く々々感謝致します。
最初、本書が自分の手に負えるものかどうかわからないまま飛び込みました。結果は、浅野先生のご指導にて極めて貴重な体験を得ることとなりました。本書の英語の解読を行うことで英文講読の力も相当鍛えられたと感じます。また上に記しましたように次の課題の芽を幾つか持つことができたと思います。今後も是非この学問的な基軸上にて楽しみつつ学んでいきたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。
2014.02.24
山下 和子