『老年について』を読了して

前回の授業で無事『老年について』を最後まで読み終えることが出来ました。さっそく受講生のお一人から以下の感想文をいただきましたので、ご紹介します。

私自身にとっても、たいへん充実した2年間でした。

キケロー『老年について(De Senectute)』を終えて

 ちょうど2年前の3月に、田中利光著『ラテン語初歩』によって初級文法を終えたことをご報告した者です。その後4月から、引き続き山下先生のご指導の下、直ちにキケローの『老年について』の講読に入りました。ラテン語名文中の名文であるキケローの作品を読むのですから、日本の古典に例えて言うなら、文語文法の初歩からいきなり源氏物語に入るようなものです。

 しかし、まがりなりにも文法の一通りは済ませていましたので、辞書と文法書を手がかりに、間違ってもよいから翻訳や注釈は見ないことにし、ともかくも自分で試訳を作って授業に臨みました。半年くらいは、1節分わずか数行を読むのに2,3日は優にかかりました。というのも、まず単語はほとんどすべて辞書で引く必要があったからであり、それでもなかなか正確な意味は捉え切れません。その上、あるまとまった部分の意味をおおよそ捉えたら、もう一度意味の理解がずれていそうな単語を引き直し、それをまたより大きな範囲でやり直すことの繰り返しだったからです。それだけやっても、意味を大きく取り違えていることが何度あったか知れません。当初は時間ばかりかかり、大変苦しくて、これはちょっと無理ではないかと何度も思いました。

 それでもめげずにやっているうちに、だんだん正しく読める部分が増えてきました。しかも、今、自分は長い間のあこがれであったキケローの作品をじかに原文で読んでいるのだと思うと、気持ちも奮い立ってきます。とはいえ、その後も、「今日はよく読めた」と少し自信をつけると、その次の週はまた間違いだらけで再び自信をなくし・・の繰り返しでした。しかし、ともかくも2年間続けると、キケローの表現テクニックのバリエーションに一通りは出会い、おおよそ全体的な感じはつかめてきました。途中からいっしょに学ぶ仲間も増え、一層楽しくなってきています。

 結局、まるまる2年間かかりましたが、一つの作品の全体をなんとか最後まで読み上げることができました。これもひとえに山下先生のご親切なご指導の賜物であり、山の学校に通えて本当によかったと深く感謝している次第です。4月からは同じキケローのPro Archiaという文学論を読むことになっています。(これは、ともに学ぶ仲間の一人が、キケローの思想理解に大変役に立つはずだと、見つけてきてくれたものです)。また4月から、楽しくも予習に忙しい日々が始まりそうです。
                                     H.K.