『ドイツ語初級』『ドイツ語講読』クラス便り(2017年6月)

「山びこ通信」2017年度春学期号より下記の記事を転載致します。

『ドイツ語初級』『ドイツ語講読』

担当 担当 吉川弘晃

 移民、EU、ポピュリズムといった現代世界の難問をめぐり、ヨーロッパとその中心部であるドイツはますますその存在感を増してきました。混迷するグローバルな社会情勢を観察する上でドイツ語でのコミュニケーション能力はこれからも重要になっていくでしょう。
 一方で明るい話もあります。最近、中高生を含む日本の若者のドイツ語への関心が高まっています。日本国内では、ドイツ語といえばかつてはゲーテやヴァグナーといった、ややお堅いハイカルチャーと結びつくイメージが根強かったのですが、2000年代頃からアニメや漫画、ゲームといったサブカルチャーでドイツ語が積極的に用いられるようになります。その多くは個々の単語の響きの格好良さを利用したものではありますが、これを機にドイツ語世界に興味をもつ人々は事実、増えているのです。例えば、日独協会は2年前から「中二病で学ぶドイツ語」講座を日本各地で開催したところ、いずれも満員御礼でした(公式HPによる)。このようにして外国語を学ぶことの楽しさを多くの人に知ってほしいものです。
 さて、今年度のドイツ語クラスは、初級文法を最初から学んでいく初級クラスと初級文法を一通り学んだ方が実際に文章を読んでいく講読クラスの2つが開講されています。
 初級クラスでは、学期前半に最低限の文法事項の約半分を一通り学習しました。格変化や語尾変化のルールに加えて単語や熟語など必要な暗記事項が多いため、楽しさの前に厳しさが立ちはだかります。講師の解説は程々に済ませて、発音、文法、作文といった演習を繰り返し行うことで定着を図っています。後半は小噺や童話の講読を交えていくつもりです。前半に厳しさを詰め込むのは、楽しさの果実をいち早く掴むための促成栽培なのです。
 講読クラスでは、ドイツ中近世史の教科書(Peter Blickle, Unruhen in der ständischen Gesellschaft 1300-1800)を冬学期から引き続き読んでいます。本書は、ドイツの都市や農民での反乱を単純に支配者と民衆の対立という構図で扱うのではなく、反乱の形態や参加者の行動や主張の多様性に注目して、ドイツ中近世の社会構造を見ていくというものです。冬学期までは論説文でよく使われるフレーズや難しい構文に注意して読んできました。ですが、今学期になると頻出する単語や熟語に慣れてきたこともあって読むスピードも上がってきたので、今学期からは文章同士の論理関係や段落同士の繋がりに注意して文章全体の構造を掴むことを目標にしたいと考えています。具体的には、(従属)接続詞や段落内の鍵となる文章に注意を払いながら読んでいくことになります。こうした読み方においては、文章内の格変化や枠構造の精確な把握がより一層重要になってくることを付け加えておきましょう。