福西です。(その1)の続きです。
事件とは、浩一がみゆきの答案用紙を取ったことでした。
(これは前回、みゆきがカンニングをからかわれて、浩一の友達の正紀を突き飛ばしたことの仕返しです)。
みゆきの足では追いつけないと悟った始は、すぐに追いかけて、答案を取り返します。
以前の体育の測定で、始は男子の中で一番足が遅いことになっていたので、始は「しまった」と思いますが、後の祭でした。
みゆきは始を問い詰めます。
「わたし、へんだへんだって思ってたんだ。(…)ほんとはできるんだ。できないふりをしてるんだ。そんなこと知らないもんだから、わたし、あんたのこと、0点ばかりでかわいそうだと思って、おしえてあげようとしたんだ。どうしてはじをかかせるのよ。」
さがりぎみの目になみだがうかんだ。ひどいことになってきた、と始は思った。
始はすなおに非を認めます。わざと最下位になることは、クラスのみんなに順位を一つずつゆずることであり、そうすると一生懸命頑張って8位が7位になったと思っているような人をぬか喜びさせることになるのだと。そうやって知らないうちに、始はみんなのことを馬鹿にし、みんなもまた始のことを馬鹿にするという構図があるのだと、理解したのでした。
みゆきは、始がみんなに馬鹿にされるのを見るのはつらいと告白します。「どうして。」と始が聞くと、
「だって、わたし……。どうしても、よ。」
と。
この時の二人のそばで揺れているブランコが、なんとも印象的です。
こうして始は、「わけをはなすよ」と、「びりっかす」のことを、みゆきと共有するきっかけを得たのでした。
この章は、この物語におけるターニング・ポイントでした。いつにもまして読み甲斐がありました。