「ぬすまれた夢」を読む(ことば2年、2022/1/5,12)(その1)

福西です。

『ぬすまれた夢』(ジョーン・エイキン、井辻朱美訳、くもん出版)を読んでいます。

「4 さけぶ髪の毛」(表紙になっている話)を読みました。

このお話は奥が深くて、2週かけて読みました。エイキンの短編の中では「三人の旅人」と同じぐらい、有名になってもいいと感じるお話です。

王女のクリスティーナは、5歳の時に、「猫のひげを切る」という罪を犯します。それは、両親と離ればなれになるさみしさから、つい無意識にしてしまったいたずらでした。

猫は、クリスティーナの名付け親(守護天使のような妖精)でした。ひげを失った猫は、守護の力を失ったこと、それによって、不幸が押し寄せること、その期間はひげが生えそろうまでの約十年間であることを、通告します。さらに、クリスティーナに罰を与えます。

「それまでのあいだ、おまえの髪に思いしらせてやろう。おまえがもっと他人の毛をうやまうようにな」

こうしてクリスティーナの髪の毛は、四六時中、彼女のしか聞こえない声で、「わるい子だ」「いけないお姫様だ」「恥を知れ」「なんて残酷なことをするんだろう」と、罵倒し続けるのでした。

そして、良心の呵責に訴えるだけでなく、いやみ、文句、悪態、悪口、汚い言葉──クリスティーナのやることなすことにけちをつけ、やる気をなくさせるようなことばかり言うのでした。髪の毛は、抜いても抜いても、すぐに生えてきます。クリスティーナは、たった一つの、しようと思ってしたわけではないあやまちのために、なんとも重い十字架を背負わされたのでした。

(その2)に続きます。