「ぬすまれた夢」を読む(ことば2年、2022/1/5,12)(その2)

福西です。

(その1)の続きです。

 

髪の毛の声はクリスティーナにしか聞こえません。そのため、他の人に打ち明けても、理解してもらえません。それもまた、彼女の孤独を増す悩みでした。それでも、彼女はめげませんでした。

彼女は、音楽や詩を作っている時に、髪の毛の声がやむことを発見します。それを希望に、人一倍、音楽や詩にのめりこみむのでした。

一方、クリスティーナの両親は、海で事故に遭い、行方不明になってしまいます(猫が言ったとおりの不幸)。それで、彼女が王位を継がねばなりませんでした。小さいうちからしなければいけない王の責務。責務の間も鳴りっぱなしの髪の毛。常人なら一日だって耐えられそうにない苦しみですが、クリスティーナは毎日毎日ひたすら辛抱します。

そして王としての実績を重ねます。一つは、「うしろ向きの国」という湿地帯を埋め立てたことでした。彼女は、なくならない髪の毛を利用して、大きなマットを作ります。じめじめした環境が解消されると、人々の心はたちまち明るくなり、女王様万歳とほめたたえるようになります。

このような調子で、クリスティーナは、最大の国難までもその髪の毛で解決します。国土の五十倍近くある大きさの氷山が、国にぶつかりそうになった時、自分の髪の毛をロープにして、氷山を両方から引っ張り、割ることに成功したのです。

そして、その氷山の中から、行方不明になっていた、クリスティーナの両親の船が出てきたのでした。

この時、永遠の責め苦とも思われた髪の毛の声が、ぴたりとや止みます。

猫のひげが生えそろう時間が満期になったのでした。

王様が帰ってきたので、クリスティーナはまた自由の身になります。そしてあるものを探すための旅に出ます。それが何かは、読んでのお楽しみです。ラストのおちは、とてもすがすがしいです。(上の記述では、それにつながる部分はあえて伏せています)。

 

クリスティーナの心が曲がらないのが「すごいなあ」と、受講生たちと感心したお話でした。

(その3)に続きます。