『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読む(西洋の児童文学を読むC、2022/1/6,13)

福西です。

『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(エリナー・ファージョン、石井桃子訳)、第2話「若ジェラード」を読んでいます。

シアが結婚すると知って、若ジェラードはショックを受けます。

そして若ジェラードは、はじめてジェラードじいに反抗します。ジェラードじいは若ジェラードを鞭打ちます。「奴隷が主に逆らうと、どうなるか」を思い知らせます。そこへ、老婆がやってきます。彼女は、この物語の冒頭で、赤ん坊だった若ジェラードを預けたその人でした。

「若者は、ときには夢をみる。羊飼い、働くばかりが生きることではない。」

「そのほかに何がある?」ジェラードじいは聞いた。

「喜び。」

「は、は、は!」とジェラードじいが声をあげた。

「それから力。」

「は、は、は!」

「それから勝利。」

「どれいには、そんなものはねえ。」ジェラードじいがいった。

老婆は、「おまえも、一度は若かった」と言いますが、ジェラードじいは「それがどうした?」と答えます。図星をさされ、返答に窮したからでしょう。それに対して、老婆は、ただ「おやすみ」と言って去ります。

ジェラードじいは、若ジェラードの若さを妬んでいます。それは(すべてを環境のせいにする)自分のせいであり、若さを失ったのは、21年間もただ金貨を数えて無駄に過ごしたからでした。

この「老婆とジェラードじい」のやりとりは、このあとの「老婆と若ジェラード」のやりとりと対照的です。