『現代ギリシア語初級文法』1・2クラス便り(2020.02)

山びこ通信2021年度号(2022年2月発行)より下記の記事を転載致します。

『現代ギリシア語初級文法』1・2

担当 福田 耕佑

 今年度の授業は半分はギリシアのテッサロニキから、半分は京都から行いました。今年は幸いなことに新しいクラスがもう一つ始まり、新しく現代ギリシア語を学び始める方が増えたことをとても嬉しく思いました。ご存知の通り(?)、現代ギリシア語は古代ギリシア語と共通の部分が多くあるのですが、もちろん時代を経る中で変化したところもあり、本授業ではなるべく現代ギリシア語の中にどのように古代ギリシア語が生きているのかについて講義の中で触れるように努めました。

ところで個人的な話ですが、本講座担当者の福田はギリシアにいる間に研究の他にギリシアの料理を作ってみたり、伝統的な楽器を学んでみたりしました。楽器の名前はギリシア語で「ポンディアキ・リラ」(ποντιακή λύρα)、トルコ語で「ケメンチェ」(Kemençe)と呼ばれています。古代語にせよ現代語にせよギリシア語を初めて学んだ時はえらく日本語と異なるなぁと思いましたが、料理に関しても調味料や食材はもちろん日本と同じものではなく、そして楽器に関しても、音階からして「ウサック」や「ヒジャズ」という摩訶不思議なもので、もはやドレミファソラシドでさえありませんでした。
言葉の学びにしても楽器の学びにしても、遅々たる歩みではありますが、いつでも厚さの違う様々な壁にぶち当たります。よく「壁を乗り越える」と言いますが、実際には「壁をなかったことにしてスルー」したり「迂回」したり、果ては「火薬で爆破」したりしながらどうにかこうにか歩き続けていると言ったところです。お世辞だと分かっていても「ギリシア語がお上手ですね」や「弦楽器を習うのが初めてだなんて信じられない」と言われればとても嬉しく、「全然上手じゃないね」と言われると真実だとは知りつつも心は深く傷ついてしまいます。私に楽器を与えて教授してくださった先生は、死ぬまでずっと練習と修行であり、共に学び続けていくのだとおっしゃいました。

そういうわけで、学ぶ者として先生や生徒という役割があるのもそうなのかもしれませんが、サービス業に従事させていただいているということ以上に、共に学び切磋琢磨し合う機会が与えられているんだぁと実感することとなった一年になりました。できる限り互いに励まし合い、頭と体でもって、あの不思議なギリシアというものを学び続けていきたいと思いました。